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サイクルコンピュータ(その1)

今後のいたずらの基礎データとしてサイクルコンピュータをいじってみます。

昔サイクルコンピュータを自作しようとして構成を考えたことが有ったのですが、一定の時間内のパルスを数えるという良くある工業製品の回転計的なやり方では、低速時の分解能や更新頻度が製品レベルにならないことが解りました。

結局そのときの想像的な結論は、市販のサイクルコンピュータは「車輪一回転の周期を測定してその逆数を計算し、タイヤ周長に関係する定数を乗じて速度を出している」らしいと言うものでした。

これだけの事をやろうとすると面倒です。その時から完全自作の意欲はしぼんでしまいました。しかし今になって考えるとこれって面白い機器です。周期を測定して周波数に変換し、画面から入力した一定の定数で修正して表示してくれる機器なのです。これを素材と考えると、いろいろ変な物が作れるかも知れません。


とりあえず内部の処理を想像して見ます。車輪に付いたセンサーは1個なので、測定は自ずと車輪1回転の周期になります。これをT(s)とします。初期設定で入力する最低限の項目としてタイヤの周長があります。これをL(mm)とします。ここで速度をV(km/h)とすると計算式はこんな感じになるはずです。
V=(L/1000000)/(T/3600)=L/T/277.8
意味としては、時速何キロとは1時間に進む距離が何キロメートルなのか?ですから、車輪が1回転で進む距離をキロに直して、それを1回転にかかった秒数を時間に直した数値で割れば良いだけです。700Cのタイヤがゆっくりクルクルと回っているのを想像し、L=2100mm、T=1sを代入するとV=7.6km/h程度の答えが出て、感覚とも一致します。

もしLの設定範囲とVの表示範囲が広範囲で有れば、すばらしく汎用的な低回転対応の回転数計になるのですが、一般的な自転車がターゲットのために小径車のユーザーすらLの設定が出来ずに困っている例が有るほどです。ここに何らかの工夫が入り込む余地があります。


では、いくつかの工夫で応用できそうな例を考えてみます。

希望する周長が大きすぎて設定不能の場合、実際のタイヤ周長をL0とすればLにL=L0/2の値を入力します。このままでは式から半分の速度しか表示されないはずなので、分母のTも半分にしてやります。そのためにスポークの検出器(一般にはマグネット)を2個付けて、式に入力される周期Tは実際にタイヤが1回転する周期T0の半分になるようにします。T=T0/2に設定する事になりますね。

上記の実例はほとんど無いでしょうが、こちらは時々発生する小径車の例です。希望する周長が小さすぎて設定不能の場合、実際のタイヤ周長をL0とすればLにL=L0*2の値を入力します。このままでは式から2倍の速度が表示されてしまうので、分母のTも2倍にしてやります。そのためにはセンサーと本体の間に簡単な回路を入れて、パルスを半分にすればOKです。式に入力される周期Tは実際にタイヤが1回転する周期T0の2倍になります。数値的にはT=T0*2となります。

ちょっと応用してみましょう。安物のサイクルコンピュータでクランクの回転数(ケイデンス)を表示する例です。クランクに磁石を付けてチェーンステーなどにセンサーを固定します。これでクランク1回転の周期が測定できます。ケイデンスは一般的に毎分の回転数で表示しますから、T=1(s)の時に60(らしい)表示が出ればOKです。すなわち、

60=L/1/277.8
16668=L
Lに16668mmを設定すれば、ケイデンス60rpmが60km/hとして表示されることになります。しかし普通は16668mmの設定は出来ないので、一桁落として1667mmの設定にします。こうするとケイデンス60rpmは6.0km/hと表示されます。簡易なのでこのくらいは我慢しましょう。

ケイデンスが表示できれば心拍数も同様です。心拍センサーを用意して車輪のセンサー部に入力すれば、ケイデンスと同じようにL=1667mm設定で心拍数が表示できます。この場合は140拍は14.0km/h表示です。

もし高級品の速度とケイデンスの両方が表示できるサイクルコンピュータであれば、心拍センサーを用意してクランクのセンサー部に入力してやれば、ケイデンスの項目として心拍数がきちんと表示されるでしょう。


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