RIGHT STUFF, Inc.Right Stuff Wrong Stuff短いクランクを作る 真ん中の息子用にルイガノのLGS-REN24という24インチのロードを買いました。割高な子供用ロードの中にあってはコストパフォーマンスの高いモデルと言えますが、59,800円は子供自転車として見れば十分に高価です。 息子には今までもらい物の、さらにお下がり自転車しか与えて居ませんし、毎日5回は勧誘電話の有る学習塾や家庭教師にもお金を使っていないことを考えると、まあいいか・・と言う、親の趣味に偏った結論でした(笑)。 REN24はそこそこ良くできているのですが、ハンドル幅とクランクに不満が有りました。ハンドルは400mm!!幅だったので、近所の自転車屋の不良在庫となっていた360mmの安物に交換しました。 クランクは歯数38T/48Tでクランク長152mmとそれなりに考えられて居ますが、如何にもホームセンター的作りの、クランク中心に鉄板のギヤ板がカシメて有るタイプです。またQファクターが178mmと私が乗っているロードよりも35mmも広く、股関節への影響が心配でした。 丁度そのタイミングでSORAのL=170mmクランクが1個余ることになりました。そこでそれを利用して、Qファクターを小さくすることと、汎用のギヤを組み替え出来る事を目標に短いクランクを作ることにしました。 まずペダルのねじの規格を調べて検討図を書きます。ペダルねじはBC9/16の20山でメネジの谷径が14.29mmです。CADで図面を書くと、170mmのクランクから150mmのクランクを作ることが出来るのが解りました。同様に175mmを用意すれば155mmが作れます。
工具はタップと下穴用のドリルが必要です。タップはホーザンのC401というタップセットが購入できます。これは左右セットで定価3,070円と比較的安価ですが、修理時のねじ山修正が目的だからか、中タップ?相当が1本なのでゼロからのねじ切りに対応できるか少し不安です。 次はドリルです。メネジの内径は13.14mmなので、ねじ山の85パーセントくらいを残す感じで13.3mmくらいの下穴が用意できれば具合が良さそうです。しかしストレートシャンクでは通常13mmまでしか販売されていませんし、モールステーパのドリルが使えるボール盤はホームセンターで9,800円で購入できません。仕方ないのでとりあえず13mmの下穴でやってみることにしました。 クランクにけがきを入れて、ホームセンターのボール盤で穴を開けていきます。パワーが無いので5段階のドリルで順に拡大していく事にしました。回転数が最低になるようにベルトを掛け替えて、工作物はバイスで固定します。 8mmくらいまではバイスを手で押さえていても何とかなりますが、それ以上はバイスをボール盤のテーブルにボルトで固定しないと危険です。このクラスのボール盤はせいぜい250Wくらいの出力ですが、250Wは似非アスリートが全力で漕ぐパワーに相当します。うまく行っているときは良いのですが、何か起こったときにこのパワーを手で止めることは出来ません。9,800円の道具で指先や視力を失ったりするのは馬鹿げています。
10mm以上の穴明けではボール盤の剛性不足を感じることが多少有りましたが、少しずつ作業を進めれば何とかなりました。切削油はその辺に転がっていたCRC5-56です。ホームセンターの道具も結構使えます。 次はタップ立てです。ホーザンのタップには先端にガイドが付いていました。最初に食いつかすときに極端に傾くことを防止できます。しかしこの部分の直径は12.8mmくらいしかないので、過度の期待は禁物です。 作業の最初はスムーズに進みました。しかし途中から予想通りにタップが重くなってしまいました。下穴が小さすぎるのです。それでも切削油を追加しながら半分くらいまで進めて、とりあえずペダルを付けて見ます。通常のタップならこのあたりでねじは完成のはずです。しかしハンドルが依然として重いのが気にかかる・・・ ペダルを入れてみると一山くらいしか入りません。ねじの径が小さすぎるようです。念のためにタップの径を測定してみると、全長に渡ってテーパーになっていました。このタップは最後までねじ込まないと完全なねじが切れないようです。 私は昔、マンションの天井板を取り付けるタップ穴を加工するバイトをしたことが有ります。脚立に立って上を向き、コンクリに埋め込まれたインサート金物にタップを黙々と切ります。1個10円で10,000円以上稼いだので、1,000個は作業した事になります。 したがってタップに関してはプロでは有りませんが、ド素人ではありません(笑)。そんな私ですが最後までタップを通すのにはかなり神経を使いました。十分に油を補給しても、途中でパキッとか言って固着しかかるし、ハンドルが何時までも妙に重いし・・・・ 苦労して最後まで作業を終わると、そこには美しいアルミのねじ山が出来ていました。先端まで綺麗に成型された完璧なねじ山は、デュラのクランクよりも上と思える出来栄えで自己満足・・・・。 最後に先端を切り落とします。金鋸で台形に切り落とし、後は大きめのヤスリで仕上げました。もう少し丸みを持たせたかったのですが、ヤスリ作業の体力が持たなかったので、この程度で今回はお終いです。恵まれた作業場と電動工具を持っているU氏の所へ行く機会が有れば、さらに手を入れたい所です。
素人が手に入れることの出来る道具だけで、短いクランクを作ることは出来ましたが労力はかなりのものです。私の場合は加工元のクランクが余っていたことと、タップ以外の工具は手持ちが有ったこと、そしてそう言った作業を楽しみと感じる習性があることから自作してみましたが、他人にお勧め出来る作業では無いです。 もし市販品があるなら、1万円以下なら絶対に買い。2万以下なら悩みながらも買い。。。こんな感じではないでしょうか。 さあて次はアルミの厚板と角パイプで、PCD110のクランクを完全自作でもしますか・・・ハハハ。
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