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安物トルクレンチ

ここにはトルクレンチの画像があります

こないだからホームセンターに行くたびに気になって仕方がなかった、「安物の」トルクレンチをとうとう買ってしまいました。

9.5mm角のヘッドで使用トルク範囲が13.6Nm〜108.5Nmのプリセット型。気になるお値段がなんと2,780円!!。はい、一桁間違っているわけではありません。3,000円以上するTONEのメガネの横に、恥ずかしそうにぶら下がっていました(笑)。

製造は台湾で発売は三条市のベストツール。測定器じゃなくてヤスリやペンチと同じ金物の一つという感じです。普通はスポンジを充填したプラスチックケースか重厚な木の箱に入っているイメージをぶちこわして、裸でぶら下がった姿は何となくイカシテます。


さわってみると期待通りの感触です。ラチェットのヘッドは980円のソケットレンチセットに入っているような質感です。回してみると高級工具マニアが卒倒しそうな音と感触がします。

さらに、説明書と本体の目盛りを見ると信じがたい事が判明しました。なんと本体に刻印してある親目盛りは13.6、27.1、40.7、54.2、67.8、81.4、94.9、108.5と書いてあります。そしてハンドル部に書いてある回転部の目盛りは1周を20等分して、0、2、4、6、8、0、2、4、6、8、と刻印されているのです。

説明書には「半回転が13.6Nmです」と書いてありました。そうです。ハンドル部の目盛り1つは1.36Nmに相当します。したがって30Nmにセットするときは親目盛りを27.1に合わせて、(30-27.1)/1.36=2.13と素早く暗算し、ハンドルの目盛りを2に合わせればOKです。そう、これはトルク管理と同時に頭の体操まで出来るすばらしいトルクレンチなのでした。

でもなんでこんなバカな仕様になったのでしょうか?すこし悩んでから計算をしてみました。1pound(lb)は0.4536kgなので4.45Nです。1feet(foot)は0.3048mです。これを掛け合わせると1.356pound-feetと言う数値がでました。これは上記の1.36とぴったり一致します。

そうです、これはアメリカ向けに企画・製作されている品物を、ばね定数も変更せずに刻印だけ打ち変えた商品だということが解りました。究極の流用によるコストダウンです。


この製品の企画段階では、コスト重視の企画担当者と納得できない設計者の間で、激しいやりとりが有ったのでは無いでしょうか。しかし今回は企画担当者の勝ちです。なぜなら私は実際に購入してしまったし、変な目盛りも目分量で十分実用的に使えているからです。

精度に関しては後日、ばねばかり等を利用して検証してみたいと思います。耐久性は良くは無いでしょうが、使用頻度の低い道具に過度の耐久性を求めるのは私の主義では有りませんから、この点は問題ありません(笑)。

あぁ。でもなんで私はこういう安くて変な工具に弱いんだろう・・・


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