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似非アスリートの阿蘇望(屁理屈編その1)

阿蘇望を前にして、今まで疑問に思っていたことや気持ちの中で整理が出来ていなかったことを再検証してみることにしました。まず初めは坂道の速度とギヤ比に関してです。

まず普通の、と言うか私の(笑)ロードレーサーを考えます。タイヤは700×23C(外周長2096mm)でフロントのチェーンリングは52×39が付いているとします。この状態でリヤのスプロケットの最適値を考えてみます。

真偽のほどは解りませんが、毎分のクランク回転数(ケイデンス)は90rpm程度を維持するのが良いとされています。私も平地では90から95rpmで走っていることが多いです。最大効率なのか最大パワーなのか最大トルクなのか解りませんが、慣れている回転数で有ることは確かです。

これらの関係をグラフにしてみました。速度は似非アスリートの登坂と言うことで5-20km/hの範囲、ケイデンスは50-100rpmの範囲を考えます。スプロケットの現実的な範囲はシマノのMTB用最大値である34Tになります。

ここには速度とスプロケット歯数のグラフが有ります。


上記の結果だけではあまり感動も有りませんが、実際のレース結果と照らし合わせて見ると面白い現実が浮かび上がってきました。

近所のヒルクライムレースでツール・ド・由宇と言うレースが有ります。全長8.2kmのコースで、トップが25分、私が32分、たまにしか乗らない人で45分といった感じのタイムです。それぞれを時速に直すと、19.7km/h、15.4km/h、10.9km/hとなります。

上のグラフからそれぞれがケイデンス90rpmを維持した場合に、必要なスプロケット歯数を探してみると・・・25分の選手は22T、32分の選手は28.5T、45分の選手は40T?となりました。

レース当日トップクラスは最大23Tくらいのギヤセットを使っていました。あれほどの坂道に対して重いギヤで凄いな・・・と思っていましたが、なんと彼らは90rpmの計算値に対して1Tの余裕を持った軽い選択をしていたのです。

私の場合はどうでしょう。私は12-27を使いました。90rpmを維持する為のギヤは28.5Tですから、計算よりも重いギヤを使っています。理系の屁理屈アスリートのくせに、見た目と気分だけに流されたアホな判断だったということが解りました。

45分の選手にとって、フロント39Tはケイデンスの面からは論外ということが解ります。さらにこのクラスの選手はなぜか23Tや25Tしか装着していない人も多く、確かにギッコンバッタン漕いでいました。


解ったつもりでいても、定量的に評価してみることは重要です。今まで私は、自分は非力だからトップクラスよりも軽いギヤを使っていると思いこんでいました。しかしケイデンスの面から評価すると、相対的にトップクラスよりも重いギヤを使っていることが解りました。

なぜこういう事になるのでしょう。一つは見た目だと思います。写真などでは早い人の写真しか出てきません。大きなスプロケットは見た目の違和感が有ります。頭に刷り込まれているわけです。

もう一つは市販品のラインナップと思います。ギヤ歯数はシマノロード用で27が最大。MTBでも34が最大です。購入するときに自然とその範囲が全てと考えてしまいますから、市販品の範囲を超えた所に自分の実力値が有るとは考えにくいものです。

最後は数学のマジックかもしれません。ギヤ比は分数の形になります。上のグラフでもある範囲からは傾きが急になって来ます。上位の選手はリニアな感覚で選択しても計算と合いますが、脚力が無い選手はグラフが急速に立ち上がっていることを意識して選択しないと、計算とかけ離れたギヤ比になってしまうわけです。

うーーん。単純な計算なのに、今回は自分自身が勉強になりました。


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