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Study the Tensile Balance of Each Spoke

前回、シマノ製9速リヤハブに関してはだいたいの感触が掴めました。そこで今回はフロントホイールも含めた、車体全体のバランスを検討してみることにしました。

まず乗車時の前輪と後輪の荷重を知る必要があります。そこで体重計を使って乗車時の荷重を測定してみました。人が56.3kgで自転車が8.2kg、合計で64.5kgでの測定です。

ポジションやハンドルへの力の入れ方によって荷重の割合は変化しましたが、通常の走行時に近い状態の数値を採用しました。

前輪と後輪の荷重割合
前輪後輪
実荷重(kgf)30.034.5
荷重割合(%)4654

もうすこし前輪荷重が軽いかと思っていましたが、結構バランスが取れた数値になっています。


次に各スポークの負担割合を計算します。前回の計算によりリヤの張力割合は1.71倍と解っていますので、各スポークの荷重割合は次の表の様になるはずです。

各スポークの荷重割合
前輪後輪
右側・フリー側(%)2334
左側・反フリー側(%)2320

前輪も後輪も等しいスポーク本数で組む場合は、上記の荷重割合がそのまま1本のスポークが受け持つ荷重の割合に等しくなるはずです。そこでスポークの直径比に直してみます。

各スポークの直径割合
前輪後輪
右側・フリー側(%)24.229.2
左側・反フリー側(%)24.222.4


次に、実際のスポークを例に太さの例を検討してみます。

フリー側を2.0mmにした場合の、各スポークの直径計算値
前輪後輪
右側・フリー側(mm)1.662.00
左側・反フリー側(mm)1.661.53

実際の選定では、後輪のフリー側にφ2.0mmの#14プレーンを使い、それ以外は中央部がφ1.6mmの#15/#16バデッドを選択するのが現実的な答えとなりそうです。


もう一つ検討してみます。通販で不特定多数にホイールを販売している「タキザワ」では、クリンチャーの在庫ホイールが#15で組まれています。

これの意味するところは・・・32本で組む場合、折れやすいフリー側であっても、不特定多数向けに#15で販売しても大きな問題は発生して居ないと言うことでしょう。

リムの剛性も関係してくると思われますが、今回私が組み替えようとしているオープンプロと、「タキザワ」標準のアレックスAT400では大きな剛性の差は無いと思われます。また、私の体重は重くはありません。したがってフリー側に#15を採用しても問題が起こりにくいはずです。

フリー側を1.8mmにした場合の、各スポークの直径計算値
前輪後輪
右側・フリー側(mm)1.491.80
左側・反フリー側(mm)1.491.38

この場合の実際の選択は、フリー側にφ1.8mmのDTコンペティションを使い、それ以外はφ1.5mmのDTレボリューションを使うのが良さそうな感じです。


今回の検討は、静的な荷重のみを検討しています。動的な荷重や衝撃などは考慮されていません。しかし実際の実験データが無い場合、動的な荷重は静的な荷重にいくらかの係数を乗じて推測するしかありません。その場合、各スポークの比率が大きく変わることは無いでしょう。

その他の因子としては、チェーンによるトルクが算入されていません。これを考慮に入れると、後輪フリー側の荷重がもっと増えることになります。後輪の反フリー側は、ハブのねじれの分だけ少しトルクが少ないと思われます。

最後に。。。こんな検討で本当に良いのか良く解りません(笑)。色々調べてもスポークを挿す向きにこだわったページは有るけど、スポークの荷重や太さを検討したページは有りませんでした。

無意味だしこのままの数値では危険なのかもしれません。しかし物事を定量的に考えて、結果をフィードバックして行く姿勢は大事だと思います。そのための叩き台としてとりあえず公開しておきます。


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