RIGHT STUFF, Inc.Right Stuff Wrong Stuff熱電対温度計の製作 新しく買った温度コントロール付き半田鏝の温度を確認したり、試作した基板の温度上昇を確認するために、秋月でセンサー部の熱容量が小さな熱電対を買ってみました。私の使っている岩通のVOAC7413と言うマルチメータは、K型熱電対の入力を持っているのでそのままで便利に使えます。 しかしVOAC7413はハンディータイプでは無いので、台所のガスの温度を測ったり天ぷら油の温度を測ったりは出来ません。そこでジャンク箱をあさって昔の秋月のDVM基板を引っ張り出してきました。 最初は秋月の説明書通りに、S8100Bを使って冷接点補償する回路を追加しましたが巧くありません。秋月の説明ではS8100Bの出力を470kと2.4kで分圧してK型熱電対出力に下駄を履かせるようになっているのですが、想定した電圧が出ないのです。 色々やっているとOPアンプでボルテージフォロワを追加すると正常な値になることが解りました。S8100Bの手持ちが2個有ったので試してみましたが2個とも同じ結果です。私の結論としてはS8100Bの出力インピーダンスはMΩの単位があるように思います。
このままOPアンプで組んでも良いのですが、せっかく低消費電流のDVMなのに勿体ない気がします。そこでダイオードを使って同じ効果の回路にしたのがこれです。
ダイオードの電流制限用抵抗は、前記の分圧抵抗を流れる電流の20倍も流してやれば良かろう・・・と適当に考えて100kとしました。 それ以外の秋月の回路との違いは、VRの調整が難しかったので100kを手持ちの10kにしました。それに伴って(というか、さらなる最適化を図るために)、組み合わせてある固定抵抗も変更してあります。キットが古いのでその他の常数も微妙に違う物があります。 R2の算出根拠としては、ここは倍率決定用の基準電圧=41.0mVを作るところです。元になる電圧はV+とCOM間の3Vですからこれを10kと390kで分圧すれば、10kの両端には75mVが加わります。41.0mVの調整用としてはいい感じです。 R3の算出根拠としては、ここはダイオードの順方向電圧降下を分圧した値と釣り合わせる電圧を作る部分です。ダイオード側からは0.6*10/(470+10)=0.0125=12.5mVが印加されます。外気温(温度差)を25℃程度と考えるとK型熱電対の出力は1mVですから13.5mV位を出力出来ればOKです。そこで3Vを10kと1Mで分圧すれば29.7mVが10kの両端電圧となり、調節範囲を満足します。
こんな感じで作ってケースに入れたのがこの写真です。DVMキットが旧型なので、タカチのYM-130にしか入りません。現行のDVMキットなら2サイズくらい小さいケースにはいるでしょう。
秋月の説明書ではCOMをケースに落とすように書いてあります。DVMではこれでうまくいくのですが熱電対温度計では表示が安定しませんでした。最終的にIN-LOをケースに落とすのが一番良好な結果になりました。 調整に関しては適当です。というのはK型熱電対の出力が完全にリニアではないために、1,000℃の温度を測るのに0℃や100℃で校正しても意味が薄いからです。と言うことで倍率の常数に関しては適当に41.0mVを採用し、35番-36番間の電圧をこれに合わせました。1,000℃前後を重視するなら、41.5mV位に合わせるべきかもしれません。 オフセットの調整に関しては良い方法を思いつきました。脇の下に挟んで自分の体温で校正するのです。熱電対を脇の下に挟み、表示が落ち着いたらおもむろにR8で36-37℃に調節します。ちょっと熱っぽい時は37℃にすればばっちりです(笑)。 これは冗談ではなくて本当です。身近にある0.1℃の単位で温度が一定した恒温槽で、検証しようと思えば直ぐに0.1℃まで測定できる測定器を用意できる物と言えば、自分の脇の下しか有りません。実際にこのようにして校正した温度計で、沸騰したお湯や氷水を測定してみましたが、99-100℃、0℃をそれぞれ示してニンマリしました。 ダイオードの下駄の部分に関しても、厳密に言えばVRにして調節をするべきかも知れません。とりあえず今回は熱電対部分を短絡して色々な環境に放置し、10℃くらいの室温変化には正常に追随していることの確認のみしました。
2006年03月01日 分圧した電圧の誤記を修正しました。(石丸様 ご指摘ありがとう御座います)
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