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オシロ用プローブを作る (50Ω入力との比較)

各周波数ごとにどんな波形が得られるか比較をしてみましたが、「真の波形」はいったい何なのかという疑問が残りました。テクトロとアジレントに電話してウン千万のオシロを持ってこさせようと思いましたが、今度はテクトロとアジレントのどちらが本当か悩まないといけません(笑)。

そう言うわけにはいかんので一生懸命考えました。出来る範囲で一番本当に近い波形を観察できて、それをそれぞれのプローブと比較できる方法を・・・
ここにはテスト機器の接続図があります。
最終的に採用したのは上図の構成です。SGから50Ω10MHzの矩形波を出し、オシロは50Ωで受けて波形を表示します。これを基準とします。オシロの50Ω入力部にTコネクタを使って信号を分岐させ、そこを各プローブでこそっと触ります。そのときの波形が基準信号をプローブ経由で見た波形です。

矩形波なのに「台形波」になっているのは、使用したSGが秋月のキットだからです。このキットの出力は高速OPアンプ駆動であり、矩形波と言うよりもこのOPアンプのスルーレート測定器に近い状態になっています。まあ、安いんだから文句は言えません。


オシロの50Ω入力で直接受けた波形です。何千万円もするオシロを持たないので、とりあえずこれを「真の波形」と言うことにしておきます。
ここにはオシロスコープの画面データがあります。
自作の抵抗線同軸プローブの波形です。止めた波形は綺麗ですが全体にぶるぶる上下しており、アナログオシロだと輝線が太く見えます。丁度プローブのグランド線が浮きかけているようなイメージです。

とは言っても非常に良くできています。自分でも信じられないくらいです。今後は先端を半田付けしても良いプローブとして、変な実験に大活躍することでしょう。
ここにはオシロスコープの画面データがあります。


秋月の200MHzプローブの例です。想像通りに立ち上がりを急峻にする味付けがしてあるようです。しかもそれがきついために10ns程度の立ち上がりでもオーバーシュートしています。正弦波はそれなりに見えるけど、74HCシリーズだと7-8Vものヒゲが観察されるのはこれが原因のようです。

補正下着でウエスト60cmと言っているようなものです。これはちょっといただけません。これなら脂肪のない64cmのほうがまだましです(笑)。
ここにはオシロスコープの画面データがあります。


レクロイのPP006Aプローブの例です。秋月ほどではありませんが、こちらも立ち上がりが急になりすぎているようです。特に立ち上がりの初期が急です。秋月との価格差2.3万円は悩ましい感じです。
ここにはオシロスコープの画面データがあります。
HPの10441Aプローブの例です。50Ω受けとほとんど同じ波形が得られています。良くできています。一番値段が高いしこのオシロの標準設定プローブなのだから当たり前と言えば当たり前ですが、4万は新品で買える値段じゃありません。だってオシロの値段が・・・(笑)。
ここにはオシロスコープの画面データがあります。
今回の実験では、私のオシロには標準設定のHP10441Aがぴったりであると言う、至極当たり前の結論になりました。レクロイのPP006Aはアジレントで言えば10073Cに相当する位置づけの商品です。価格帯も違うし想定している本体も違うわけですから、こういう結果も当然かと思います。

今回の一連の実験を通じて思ったことは、プローブ一つでこんなにも波形が変わってしまうものなのか・・・と言うことです。また製作を通じて思ったことは、アマチュア無線のアンテナに似ていると言うことです。機能を限定すれば安価な自作品でも使えるものが出来ます。違いはアンテナを自作する人や記事は多いですが、プローブを自作する人や記事はほとんど無いことです。


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