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GX250 FETレギュレータの製作

低損失レクチファイヤがそれなりに巧くいったので、気をよくしてレギュレータの改良にも手を出してしまいました。電圧も安定してコントロール出来ていたし、劇的な改善は期待できないと解ってはいたのですがなんとなく。

とりあえず現状の性能と内部構成を調べてみます。フィールド巻線の代わりに5Ωの抵抗を用意し、電源装置と電圧計でレギュレート電圧を測定しました。

14.7V以上で抵抗(フィールド)への給電がOFFになります。ONになる方もはっきりとしたヒステリシスは設けてない様で、試験用配線の電圧降下程度でON/OFFを繰り返していました。

ONの時のレギュレータ部の電圧降下は2.5A時に0.88Vでした。電力用のTrみたいです。ダーリントンかもしれません。

次に相手がコイルという事で「茶」<->「緑」間にフライホイールダイオードが入っているかを試してみました。結果は2.5A時に0.93Vの電圧降下を発生させる、普通の整流用ダイオードが入っている様です。


ここにはレギュレータの回路図があります。

以上の試験から回路を考えてみました。最初に動作を考えたときはOPアンプで考えていましたが、30年くらい前の工業高校の教科書に載っていた回路がシンプルだったのでそれをベースに考え直しました。

せっかく新作するのだからパワーTrは止めてFETにします。これだと電圧降下0.1V以下が期待できますし、「FETレギュレータ」と言う言葉が少しだけカッコイイです(笑)。

回路的には、ツェナーダイオードD2で基準電圧を作ります。これは出来るだけコントロール電圧の14.5Vに近い方が敏感に制御出来る計算になります。今回は手持ちの中で一番近い12Vを使いました。

12Vのツェナーに5mA流す事を基準にして、抵抗R3とR4を決めます。R4は5mA時に0.5-0.6Vのベース電圧を作る様に。R3は残りの電圧を吸収できる様にします。

トランジスタはNPNの小信号用なら何でも良いので定番の2SC1815です。バッテリー電圧が14.5Vを超えるとベース電圧が0.5-0.6VになってONとなり、FETのゲートをグランドに落としてフィールドへの給電を止めます。

FETは秋月電子で200円の2SK3163です。200円なのに60V-75Aと立派すぎる性能です。今回は4Aのスイッチングなので、温度やら色々を考慮しても計算などせずにOKでしょう。

このFETはゲート電圧が4Vくらい有ればONになるので、適当な抵抗でバッテリー電圧を分圧して加えておきます。ここでは1kを使いました。

D1はフライホイールダイオードです。コイルへの給電を急にOFFにするわけですから保護の意味で入れておきます。積極的なヒステリシスを入れていませんから、もし発振的にON/OFFを繰り返した場合は、巧くいくとPWM制御になるかもしれません。巧くいかない場合は変になるかも・・・


ここにはレギュレータ試験中の画像があります。

とりあえず空中配線でくみ上げて試験します。R3は当初390Ωで計算していましたが、コントロール電圧が15.2Vにもなってしまいました。ちょっと過大です。

段々と小さくしていくと、330Ωで14.8V。270Ωで14.4Vとなりました。オリジナルは14.7V程度の出力ですが、将来的にシールドバッテリー化などを考えた場合に高すぎる様な気もして、14.4Vにセットしました。

バイクのひ弱な配線の場合、コントロール電圧をどこで検出するかによって直ぐに0.2-0.5V位は変動しますので、あまり気にしても仕方がありません。

ON時の電圧降下はかなり改善されました。流石大電力用のFETです。2.5Aを流しても18mVしかロスしません。


ここにはレギュレータの比較画像があります。

取付の互換性を考慮して3mmのアルミ板上にくみ上げました。この状態で車載して試験し、問題がなかったので最終的にはエポキシで古墳みたいに固めて完成です。

結果的には劇的な差はありません。まあ、当然と言えば当然です。フィールドコイルへの供給電圧が、発電の厳しい時に14.5V-0.88V=13.62Vから、14.5V-18mV=14.48Vへと6%改善されただけですから。

この恩恵にあずかれるのは、灯火類を全部点けたアイドリング時くらいです。これよりも回転が上がれば、フィールドコイルへの給電は減少して行きますから目に見える改善はありません。レギュレータ自体の発熱が少なくはなっているはずですが。

アイドリング時の充電状況やバッテリー電圧を調べてみました。ヘッドライトだけを点灯した場合、1,100rpmくらいが充電に切り替わる境目です。灯火類を全部点灯すれば1,300rpmくらいが充電に切り替わる回転数になります。

充電に関しては、劇的ではありませんが少しだけ改善されたみたいです。レクチファイヤやレギュレータの発熱は相当減りました。しかし、わずか18mVの電圧降下のみでフィールドコイルへ給電しているという自己満足が全てかもしれません(笑)。

面白いのはバッテリー電圧で、灯火類がOFFならアイドリング時にコントロールされて14.2Vになります。灯火を点灯すると14.7Vに上昇します。これは灯火類の点灯によって電圧降下してしまう回路から、検出用の「茶」線が出てきているためと思われます。これをバッテリー端子から直に取り直せば、いつも14.4V近辺でコントロールされるはずです。


質問メールを戴いたので追記しておきます。

このレギュレータは、バッテリー電圧に応じてフィールドコイルの駆動状態を変えて発電電圧を調整するタイプ用です。また、その中のマイナス側を制御するタイプです。

他の方式には使えません。バイクは車種や時代によって制御方式が大きく異なります。それぞれに全く考え方が違いますので、良くわからないまま適当に流用すると最悪は配線が燃えたりバッテリーが爆発したりする可能性があります。

フィールドコイルの有るタイプでもプラス側を制御しているバイクの場合は、フィールドコイルの結線を変えるか2SJタイプのFETを使って対称な回路を組めばいけそうですね。


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