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GX250 イグニッション印加電圧と着火性

バッテリー電圧と点火の関連性を確認するために、バッテリーの代わりに安定化電源を装着して電圧を上下させて試験してみました。

車両はGX250で純正ではポイント点火の時代です。このポイント部分を自作のセミトラと交換しながら、交互に電圧変化の影響を比べました。

通常のバッテリー点火の場合ですが、ヒューズ部分の電圧はエンジン停止中から高回転までの間で、13Vから14V程度の変動でした。配線やスイッチの電圧降下を考えるとこんなものでしょう。

GXのヒューズは個別に成っていますから、イグニッションのヒューズを抜いてこの部分に安定化電源から別の電圧を印加しての試験です


ポイント点火だとヒューズ部分の印加電圧が、12Vくらいに落ちただけでもアイドリング回転の具合が変動するのが解ります。プラグは全てBP7EV改でギャップは0.9mm。灰色に焼けた状態です。

次にセミトラを追加した場合です。どんどん電圧を下げてもアイドリング回転は変わらず、最低では6Vでもアイドリングしました。ポイント式と大きな差です。点火エネルギーは12Vの1/4位に成っているはずですが、アイドリングには高エネルギーは必要無いのかもしれません。

セミトラでもアクセルを煽ったときは変化が出ました。6Vではボコボコした感じで回転が付いて来ません。はっきりと失火しています。6Vから10V位まではこの傾向が顕著ではっきりと解ります。それ以上は大きな変化は有りませんが、18V位までは電圧に比例して微妙に回転の付きが良くなっているような"気がします"。

急加速時にはプラグの要求電圧が高くなっているために、電源電圧が低いと2次電圧も低くなってしまうために失火が発生していると思われます。性能を追求するエンジンの場合、DC-DCコンバータで点火系の1次電圧を上げたりすれば多少の効果があるかもしれません。

今回のセミトラはFETを200Vでクランプしているタイプでした。もし電圧の問題で有れば、これを400Vくらいのクランプに変更すれば10Vでも急加速できるかもしれません。エネルギー的な問題であれば、点火直前にコイルに溜まっているエネルギーを増量するしか無いでしょう。

電源装置のアナログ式電流計で見ると、電流はアイドリングで1.5A程度(大きく針が振れる)で、回転を上げると1A弱まで減少しました。毎回の通電時間が短くなっているために、中速以上ではコイルが飽和していないのが良く解ります。セミトラでもドエル時間をコントロール出来ると面白いでしょう。でも単純な高回転だとプラグの要求電圧は低くなってくるので、ここに拘ってもあまり実利がないかも。。。とか色々考えます。


実際に実験してみると面白い結果が得られました。理屈上はポイント式では特に低回転でのスイッチとしての切れが悪く、結果的に点火に必要な2次電圧も安定しない事に成りますが、バイク屋さんとか旧車好きライダーの話では「ポイント式の方が低電圧まで粘る」的な話を良く聞きます。

トランジスタ式と言っても色々有るとは思いますが、少なくとも今回のセミトラ式では逆の結果に成りました。明らかにトランジスタ式の方が低電圧まで粘りますし、ポイント式では標準電圧から少し下げるだけでも体感で解るほどアイドリングが変化しました。

今回の実験結果から直ぐに「いや、トランジスタ式の方が低電圧で粘る」と言うのは科学的じゃ無いですが、「トランジスタ式の方が粘る場合も有った」とは言えそうです。

ただ、ポイント式には目で見て解る部品だけで構成されているという単純さも有りますし、電子機器が複雑に成ってくると複雑さに起因する新たなトラブルの可能性も出てきます。そのシチュエーションにどちらが適しているかは、また別の判断です。


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