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GX250 点火コイル検討

GX250用にポイント仕様とフルトラ仕様の2種類の点火コイルが手に入ったので、実測とシミュレーションを交えながら差を検証してみました。


ここにはイグニッションコイルの画像があります。

これがGX250のポイント仕様に付いているイグニッションコイルです。酷く汚れているしプラグキャップの所はスーパーXで修理してありますが、普通に走っていることから普通の中古品程度の性能は出ているのでしょう。

比較対象のもう一個は解体屋で買ってきたXS250のハーネスに付いてきたコイル。イグナイター用と思われるコネクタが残っているのでフルトラ仕様と思われます。


ここには電流波形があります。

適当な抵抗を直列に入れて電流波形を測定してみました。ちゃんとした分流抵抗じゃ無いので縦軸はいいかげん。こんな波形がとれる電流プローブなんて我が家の機材を全部足しても買えません(笑)。

初めて自分の目で見るイグニッションコイルの電流波形は結構感動的。アイドリングだから十分に飽和しているのが解ります。


ここには電流波形があります。

こちらはPspiceで同じ様な波形がでるまで定数を変えてみたら時のグラフ。このときの計算上のインダクタンスはL=15mH位らしい。

自作した秋月のインダクタンスメータで現物のコイルを実測してみるとL=14.45mHとほぼ一致していたのでびっくり。自作品とフリーソフトでこのくらい遊べると嬉しい。

確かに点火コイルの回路はコイルに直流電圧を印加するだけの単純な回路。と言うことは、変な検証はPspiceでやっても大きな差は無いと言うこと。。。で、以下はPspiceでの検証です。


ポイント仕様コイルのインダクタンスL=14.45mH、直流抵抗R=4.075Ωです。また車体側の条件は、電源電圧E=14V、回転数=1200rpmでのドエルタイム25ms(ポイントギャップ0.30mmくらい)です。

このコイルが飽和したときの電流とエネルギーは
I=E/R=14/4.075=3.44A
W=1/2*L*I^2=1/2*14.45/1000*3.44^2=85.5mJ (これを100%とする)です。

ここには電流波形があります。

回転数2倍の2400rpmの時すなわちドエルタイム12.5msをシミュレーションすると、飽和電流の3.44Aに対して3.3Aと96%まで流せています。

このときの蓄積エネルギーは85.5*0.96^2=78.8mJ です。飽和に対する割合は92%です。


ここには電流波形があります。

回転数3600rpmの時すなわち8.33msをシミュレーションすると、飽和電流の3.44Aに対して3.1Aと90%まで流せています。

このときの蓄積エネルギーは85.5*0.90^2=69.3mJ です。飽和に対する割合は81%です。


ここには電流波形があります。

回転数8400rpmの時すなわち3.47msをシミュレーションすると、飽和電流の3.44Aに対して2.2Aと64%まで流せています。

このときの蓄積エネルギーは85.5*0.64^2=35.0mJ です。飽和に対する割合は41%です。


フルトラ仕様コイルはインダクタンスL=6.5mH、直流抵抗R=2.785Ωです。また車体側の条件は、電源電圧E=14V、回転数=1200rpmでのドエルタイム25ms(ポイントギャップ0.30mmくらい)です。

このコイルが飽和したときの電流とエネルギーは
I=E/R=14/2.785=5.03A
W=1/2*L*I^2=1/2*6.5/1000*5.03^2=82.2mJ (これを100%とする)です。

電流は多いけどエネルギーはポイント用とほとんど一緒だと解りました。 ここには電流波形があります。

回転数2400rpmの時すなわち12.5msをシミュレーションすると、飽和電流の5.03Aに対して5.0Aと99%まで流せています。

エネルギーは82.2*0.99^2=80.6mJ です。飽和に対する割合は98パーセントです。

ポイント仕様の92パーセントと大きな差は有りません。


ここには電流波形があります。

回転数3600rpmの時すなわち8.33msをシミュレーションすると、飽和電流の5.03Aに対して4.9Aと97%まで流せています。

エネルギーは82.2*0.97^2=77.3mJ です、飽和に対する割合は94%です。

ポイント仕様は81%なので、少し差が出てきました。


ここには電流波形があります。

回転数8400rpmの時すなわち3.47msをシミュレーションすると、飽和電流の5.03Aに対して3.9Aと78%まで流せています。

エネルギーは82.2*0.78^2=50.5mJ です。飽和に対する割合は61%です。

ポイント仕様は41%なので、約1.5倍のエネルギーを蓄積できている事になります。高回転ではかなりの差です。


フルトラ用はインダクタンスが小さい代わりに直流抵抗が小さくて電流が大きい。結果的に飽和した時(低回転時)のエネルギーはポイント用と変わらないが、過渡的な(高回転時)状況では蓄積できるエネルギーに差が出てきます。

これはコイルの理論通りですし、昔から有るスポーツコイルなどの考えている方向その物です。もっとコイルのインダクタンスを減らして代わりに外付け抵抗を付ければ高回転でのエネルギー減少を少なくする事が可能です。

こういう単純なシミュレーションは実際も当たっているのでしょう。私のGX250はセミトラにしたことでポイントの電流制限が無くなっています。と言うことはコイルも高回転までロスのないフルトラ用を装着するべきなのでしょう。

シミュレーション結果からも解るように消費電流は定常的に5Aが流れている訳ではなく、ポイント閉は全体の1/4サイクル程度です。従って走行中の電流はそれほど心配無いでしょう。しかしエンジン停止時のコイル過熱対策はなにかした方が良いような気がします。

停止時の過熱対策までやるのなら、低速時の通電時間減少や高速時の通電時間増加など、色々とやりたいことが出てきてしまいます。機器の信頼性さえ確保できれば、これらはエンジンに無理をかけない改造なので前向きに取り組みたい部分です。


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