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XS650(XS1B) メインキーを修理する

XS650のメインキーを修理することにしました。大きな目的は「接点の接触不良を改善する」事と「ONの状態でも抜けるのを何とかする」の2点です。

パーツリストにはAssyの画像しか有りません。鍵の情報はWEBにもほとんど出てこないので手探りで分解していくしか有りません。


ここにはXS650のメインキー接点部品一覧画像が有ります。

メインキー内部の部品を、パーツリスト的に並べてみました。左下の基台部分はワイヤーブラシで錆を落とした後にラストマスターの黒をスプレーしています。右上のシリンダーAssyはヤスリと真鍮ブラシでクロームメッキの凹凸を均した後に、銀ラッカーをスプレーしています。

写真ではそこそこ綺麗に見えますが、現実は小学生が作ったオートバイのプラモデル状態です(笑)。

ハーネスが付いたベークライト板上の電極は傷と緑青が酷いので、真鍮ブラシで掃除した後にヤスリで上面を平らに修正しておきました。深い傷が2本くらい残っていますが、完全に修正すると薄くなりすぎるので適当に妥協します。

三日月型の凹凸がある鉄板と、白いプラスチックの部品の弾力でキー位置の節度感を出すようになっています。

これはXS650の内部ですが、部品取りに持っているTX650(たぶん2型)では、白いプラスチックの部品形状が少し見直しされていました。


ここにはXS650のキーシリンダー画像が有ります。

XS650のキーシリンダー内部です。ディスクタイプのシリンダー錠です。一番左端のディスクはシリンダー本体の抜け止めなので、実際に有効なディスクは4枚です。

シリンダーとカバーの間にある黒い物体は、入り口の廻りに充填してあるゴムみたいな部品です。摩耗と硬化でボロボロでした。

右上の鍵は純正ではなくて、京都の峠で走行中に鍵を落としたときに作ってもらった鍵です。その前の鍵も純正品では有りませんでしたから、私はXSの純正品の形状を知りません。

シリンダと鍵だけで何回も抜き差しを繰り返しているうちに、だいぶ解ってきました。ONで抜ける原因の一つは当然全体的な摩耗です。これはどうすることも出来ません。しかしかなり支配的な要因が有ります。それはボロボロのゴムと鍵先端の形状です。

入り口にゴムのサポートが無いために鍵に抵抗力が働きません。また、ゴムが入り口の周囲を支えないので鍵が上下に簡単に傾いてしまいます。また、ディスクを摺動させるバネは片側だけに並んでいます。そのために鍵の先端が一方向に押されて傾いてしまい、ON状態でディスクにロックされているべき鍵がガタの集積と相まって抜けてしまうようなのです。

鍵の形を公開しては不味いとご心配の方も居られるかもしれませんが、以下に記載しているようにこの後私は予備品のディスクと組み合わせて、別の鍵形状に変更しますので大丈夫です(^^)。


ここにはTX650のシリンダー画像が有ります。

部品取りに確保しているTX650(たぶん通称2型)のキーシリンダー内部です。このバイクは錠だけしか有りません。今回のXS650で同形式の錠の勉強が出来たので鍵屋さんごっこをしてみました。

上でTX650と書いていましたが、TXでは無くてXS650Eの物みたいです。TXはもうちょっとモダンな形状の部品が出てきましたので違うみたいです。

右上の怪しい鍵がアルミ板で自作した鍵です。本当はブランクキーを買ってきたかったのですが、物がものだけに素人にブランクキーなんか売ってくれるとは思えません。せめて真鍮板が欲しかったのですが2mmの真鍮版も見あたりませんでした。仕方ないので軟質アルミです。

それと、上記にもチラッと書いているように今のXS650の鍵形状が正しいのか疑問が有ったので、特に先端形状を検証するためにもゼロから作ってみることにしました。

勉強の甲斐あってきちんと動作する鍵が出来ました。軟質アルミなので何十回も試すとすり減りますが(笑)。


ここにはキー先端部の比較画像が有ります。

XS650用スペアキーと自作TX650用スペアキーの比較です。シリンダーが違うので段々の形状は当然違いますが、それとは別に先端の形状が違います。

TX650用の先端には、シリンダー一番奥の穴に引っかかる部分を追加しました。この部分があるとディスクを押すバネの力が働いても、鍵の先端がシリンダーの奥に固定されるので鍵が傾きません。

TX650も入り口のゴムがボロボロですが、先端の対策のおかげもあってON状態で鍵が抜けてきません。この対策は有効と思われます。

問題は現在のXS650の鍵です。今は先端に凸部のない「M257C」と言うブランク材から削り出されています。しかし純正品には先端の凸部が付いていたのかもしれません。

私がエンジンをかけたまま途方に暮れて泣きついた下鴨の鍵屋さん。先端に凸部があるブランクを持っていなかったのか、錠だけで鍵を作るときにそこまで見つける事が出来なかったのか、それとも純正品の先端にも凸部は無いのか??


先端の凸部が有効であると解ったので、XS650の鍵はこの方向で作ることにします。また安全弁として入り口のゴムも適当な材料ででっち上げる事にします。

あと、ここに公開してしまったので鍵の形状は変更しないといけません。これはXS650とTX650のディスクを適当に組み合わせれば、好みのギザギザが出来ます。

一番の問題はブランク材でしょう。今回アルミ板で自作したようなブランクキーをどこかで買うことが出来ればベストですが、常識的に素人に売ってくれるとは思えません。仕方ないので真鍮板から削り出すことになりそうです。売ってくれる鍵屋さん大募集中です!!(笑)。

軟質のアルミならやすりを使って30分ほどで出来ましたが、真鍮はもう少し硬いのでどうなんでしょう・・・かえってサクサク削れて楽なのかもしれませんが。

今回はこれ以外に副産物が有りました。鍵が掛かったままなので洗浄も出来ずに放置されていたTX650用タンク。今回は鍵のことを勉強したおかげで、開かずのタンクを開けることが出来ます。いやぁ。人生何事も勉強です。


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