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XS650(XS1B) チリル式レギュレータのお勉強

XS1のバッテリーは5.5AHと大きくありません。これはセルモータが装備されていない為で、同じ時代でもセル付きのXS650Eだと12AHへと一気に増大します。

以前は5.5AHでも大きな問題もなく使ってきていましたが、その頃はヘッドライトが常時点灯では有りませんでした。今の路上で実用的に使うには常時点灯でも十分に充電できる様に整備しないといけません。

最終的にはGX250で自作したFETレギュレータに交換する予定ですが、その前に機械式の接点を持った昔ながらのチリル式レギュレータの動作について調べてみます。


ここにはレギュレータの画像があります。

XS1のレギュレータはこんな感じで右のサイドカバー内に装備されています。レクチファイヤは左のカバー内です。

海外の資料に依れば、日立製で「TLIZ-49」?となっていました。私のはプレス型の日立マーク以外は読めません。

下に付いている2個が連結された巻線抵抗は、短い方が中のリレーに流す電流を調整している抵抗で、長い方がフィールドコイルに流す電流を調整する抵抗です。状況によってはかなり発熱しますから、風通しの良い状態にしておかないといけません。


ここにはチリル式の回路図があります。

基本の回路図です。エンジン停止時や低速回転時はこの状態になっています。リレー部分のコイルの直流抵抗は実測で11Ω。フィールドコイルの直流抵抗は実測で5Ωです。

電流は二つの経路で流れます。一つはリレーのコイル部分を流れる電流で、バッテリーから電流制限の25Ωを経由して11Ωのコイルを励磁します。もう一つの経路はリレーの閉じた接点を経由してフィールドコイルを励磁します。この接点は「低速接点」などと言われている方です。

バッテリーの電圧を14.5Vとすれば、前者に流れる電流はI=14.5/(25+11)=0.403Aです。したがってこの部分で消費される電力はP=14.5x0.403=5.84Wとなります。この電力は発電には直接寄与せずに無駄な電力と言うことになります。

フィールドコイルに流れる電流はI=14.5/5=2.9Aです。電力はP=14.5x2.9=42.1Wとなります。この電力で作られた磁界を元に発電されるわけです。

実際にこの状態の時は14.5Vよりも少し電圧が低いはずですが、この辺りはバッテリーの状態によっても異なってきますし、概略の動作検証にはそこまでの細かさは必要なかろうとおもって無視してます。


ここにはチリル式の回路図があります。

エンジン回転数が或る程度上がった時の状態です。発電電圧が上昇するためにリレーのコイルの吸引力が少し増加します。そのために接点を構成している鉄片がコイルに引き寄せられて「低速接点」を開放します。

この状態でも電流は二つの経路で流れます。一つはリレーのコイル部分を流れる電流で、バッテリーから電流制限の25Ωを経由して11Ωのコイルを励磁します。もう一つの経路は10Ωの電流制限抵抗を経由してフィールドコイルを励磁します。

バッテリーの電圧を14.5Vとすれば、前者に流れる電流はI=14.5/(25+11)=0.403Aです。したがってこの部分で消費される電力はP=14.5x0.403=5.84Wとなります。この電力は発電には直接寄与せずに無駄な電力と言うことになります。

フィールドコイルに印加される電圧は14.5x5/(10+5)=4.83Vに減少します。

フィールドコイルに流れる電流はI=14.5/(10+5)=0.967Aです。したがってコイルで消費される電力はP=4.83x0.967=4.67Wになります。

電流制限抵抗の印加電圧は14.5V-4.83=9.67Vです。電流はフィールドコイルと同じく0.967A流れていますから、消費される電力はP=9.67x0.967=9.35Wとなります。この電力も発電には直接寄与していない無駄な電力です。

すなわち、この状態での無駄な電力はP=5.84+9.35=15.19Wも発生している事が解ります。


ここにはチリル式の回路図があります。

回転が上昇して電圧が14.5Vを大きく超えてしまった状態です。コイルの吸引力がかなり強くなるために、鉄片を強く引きつけてコイル側の接点が閉じます。この接点は「高速接点」と言われている接点です。

この状態ではフィールドコイルに電流は流れません。なぜならフィールドコイルの両端は両方ともグランドに落とされているからです。従ってフィールドコイルで電力は消費しませんが発電もしていません。

この状態での無駄な電力は2系統有ります。一つは上記の2例と同じでリレーのコイルを駆動する部分です。この電流はI=14.5/(25+11)=0.403Aです。したがってこの部分で消費される電力はP=14.5x0.403=5.84Wとなります。

もう一つの経路はフィールドコイル用の電流制限抵抗を流れる電流です。10Ωに14.5Vがそのまま印加される形になっています。電流はI=14.5/10=1.45Aです。したがってこの部分で消費される電力はP=14.5x1.45=21.0Wとなります。

従ってこの状態では無駄な電力がP=5.84+21.0=26.8Wも発生している事が解ります。


色々な要因が有るので上記の3態がどのような割合であるかは良くわかりません。仮にそれぞれが1/3の割合で有るとすれば、無駄な電力はP=5.84/3+15.19/3+26.8/3=15.9Wと算出されました。

チリル式のレギュレータの場合、機械式の接点で信頼性が低いことは理解していました。しかしこれほど多くの無効電力が発生しているとは思っていませんでした。

フライホイールダイオードを有する電子式のレギュレータに交換すれば、15.9Wの大半をなくすことが可能です。これは40Wのヘッドランプを55Wに交換出来る位の効果です。今すぐに電子化をやるべきだと確信しました。

ただ、チリル式のそれっぽい外観も面白いと感じていますので、巻線抵抗などもそのまま残しておいて内部のみ電子化をしようと思います。



内部を見ていって興味深く感じたのは10Ωの抵抗です。高速時にはこの抵抗にバッテリー電圧がフルに印加されてしまいます。なぜこんな無駄に見える構成なのでしょう。

私なりに想像してみたのは、こういう構成にしないと切り替わり時にコイル両端が開放となってしまい、逆起電力で接点が荒れたり発電側にも色々と問題が出てくるからでは無いでしょうか。

今の構成であれば「低→中→高」の切り替え時に制限抵抗部分の変化は「0Ω→10Ω→接地」と変化して切り替わりの瞬間にも開放のタイミングが有りません。


もうひとつ考えたのは機械式のオンオフ制御にフライホイールダイオードを追加では駄目なのかと言うことです。やっていることはトランジスター式やFET式のレギュレータその物ですが、電圧検出にコイルの磁力を、オンオフに機械接点を使うだけです。

数十kHzでスイッチングする訳じゃ有りませんから、これは行けそうな気がします。でもこういう方式が出なかったのは何か問題が有ったのでしょう。もしかしたらその時代はセレン整流器しか無いために現実的では無かったのかもしれません。


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