RIGHT STUFF, Inc.

Right Stuff Wrong Stuff


XS650(XS1B) 壊れたセミトラ

FETを10個も使ったセミトラユニットが壊れてしまいました。秋月の安物なので金銭的な被害は少ないのですが(笑)、今後のためにしっかりと対策を考えなければいけません。


ここには壊れたセミトラの画像があります。

右側だけが失火するようになりました。充填した接着剤を剥がして調べてみると、2SC1815までは正常に動作していました。FET自体が壊れてしまったようです。

壊れた右側のFETを剥がしました。全のFETに異常が見られました。FETの専門家では無いので確信は持てませんが、D<->S間のダイオードは生きています。と言うことは壊れたのはゲートのような気がします。サプレッサダイオードも生きています。


ここにはセミトラの回路図が有ります。

回路図を見直します。

250V耐圧のFETに200Vのサプレッサダイオードを組み合わせたタイプは1年近く問題が発生していません。今回のダイオードも同じメーカーの同じワット数の物です。しかも今回はFETが500Vでダイオードは350Vなのでストレスが加わる確率はもっと低いと思われます。

ゲートには保護用にツェナーダイオードを入れています。しかし10個のFETに対して1個しか入れてません。実際の配置ではダイオードまでに距離があって、配線のインダクタンスなどが悪さをする可能性が考えられます。250V耐圧バージョンも18Vのツェナーは1個ですが、FETも片側1個しか無いので配置的にシンプルで近いです。

もう一つ気になるのはゲートのプラス側です。コイル1次側の通電を速くする必要は無いので、ここは抵抗経由でゆっくりとONするように考えていました。しかし2SC1815がOFFの時を考えると、ゲートは電源に対して500Ωのインピーダンスしか無いことになります。1気筒ならこれでも良いような気がします。このタイミングで大きなノイズは有りません。しかし2気筒の場合、反対側気筒の点火が重なってしまいます。

2SC1815がOFFでグランドからゲートが切り離されたタイミングで、隣ではスパークをしているわけです。直ぐ近くで数百ボルトのノイズが入り乱れて居る環境では、抵抗でプルアップだけではちょっとフラフラしているかもしれません。上下ともトランジスタかFETを使って、コンプリメンタリな駆動にするべきかもしれません。速度面では必要ないのですが、どのタイミングでもゲートのインピーダンスを低くすると言う意味で。

あとはゲート抵抗もフェライトビーズも何も付いていません。寄生振動などの可能性は低いように思いますが、この部分もちょっと無造作過ぎたかもしれません。


ここには壊れたセミトラ基板の裏面画像があります。

基板の配置です。高速のスイッチングでは無いのでいい加減に並べるだけで並列接続してしまいました。しかも普通の蛇の目基板です。

FETが1個なら良かったのかもしれません。しかし今回は1気筒に5個も並列にしています。そのために赤線で囲んだゲートとドレインの配線が平行に走ってしまいました。

ドレインには点火毎に数百ボルトの電圧が加わります。ゲートの耐圧は20から30Vしか有りません。ちょっと配置的な配慮が足りないような気がします。壊れてから言うのは設計的なセンスが無い証拠ですが(笑)。

そう言えばソーラーボートレースに挑戦していた頃、1年目にドライバが焼損してしまい、2年目はFET用の多層基板を銅板を積層して自作しました。その年は完走できました。やっぱり実装まで真面目に検討して作らないといけません。反省しましょう。


なんとなく解ってきたような気がします。手元に安いFETが有ったことからスタートしたセミトラの自作ですが、今回は中途半端に欲張りすぎたような気がします。ロスを気にして5個並列にするなら、それなりに回路や実装に気を使うべきでした。

このままでは悔しいし、一度セミトラの安定感を知ってしまうとノーマルポイントには戻れません。次のバージョンはもっと安定した回路と実装でまとめてみたいと思います。


このボタンは、目次に戻るリンクです。