RIGHT STUFF, Inc.

Right Stuff Wrong Stuff


XS650(XS1B) ホール効果センサの試験

ポイントレスにする場合、今の私に実現可能な検出方式は以下の3件と思われます。

  • 光学式センサによる方式。
  • 磁石とコイルによる方式。
  • 磁石とホール効果センサによる方式。
コイルによる方式はメーカーでの実績、それなりの出力が得られる、ノイズや熱に強そう、等々とメリットが多数有ります。しかし個人がゼロから自作するときは、動いていないと試験できない見た目でセッティングできない耐熱温度の高い電線は結構高い、と言う大きなデメリットも有ります。

光学センサとホール効果センサの場合は極低速でも安定した出力が得られます。タイミングも高回転時と変わらないので手回しでセッティングが出来ます。従ってこれらの方式からスタートするのが簡単だろうと思っていました。

そのためにGX250は光学式で試験はしたのですが、耐熱性から実用品にまとめるまでは行きませんでした。ところが、先日最適な部品を見つけてしまったのです。

ハネウエル社のホール効果センサでSS400シリーズです。使用温度範囲はなんと150度まで有ります。華氏じゃありません摂氏です(笑)。しかも単価はRSコンポーネンツで560円!

早速手配して試験を開始しました。


ここには試験用磁石の画像があります。

使ったことが無いので全く解りません。とりあえずユニポーラタイプのSS433Aというセンサを手配しました。これはオープンコレクタ出力なので抵抗とLEDを繋いで試験回路とします。

感触を掴むために家にある磁石を集めてきました。左から、円筒形のネオジウム・鉄・ボロン?、GPSアンテナから外した同じくネオジウム系?、事務用の紙を鋏むヤツ2種類でこれはフェライト系、右端はマブチのRE-26から外したフェライト系?です。

どのくらいの距離で動作するか試してみました。
円筒形GPSアンテナ用小型紙押さえ大型紙押さえモータ内側モータ外側
12mm5mm4mm5mm7mm2mm

モータの界磁磁石を思いついたときはこれが最適と予想していました。このままポイントカムに貼り付ければOKです。しかし内側の磁力を考慮した設計になっているようで、外側の磁力は弱すぎました。なかなか磁石の世界も奥が深そうです。

円筒形は流石に強いです。GPSアンテナ用も素材としては同じくらい強そうなのですが、小さな断面方向にSNSNと小さく磁化されている為に今回のような測定では距離が出ませんでした。鉄板を持ち上げるのは得意です。


ここには差動範囲の画像があります。

メーカーの資料を読んでいると、今回の用途には2種類の方法が選べそうでした。一つはフォトインタラプタみたいに磁石とセンサを向かい合わせにセットし、間に軟鉄の板を出し入れする方法です。

磁力やセンサの感度変化にも強くて、安定した方式と思われます。ランティスのディストリビュータの中もこの方式じゃ無いかな?と思われる部品が並んでいました。また、この方式のセンサAssyも売っていましたが、XSには大きめなのと1個が5,000円近くするので買えません。

もう一つは磁石を回転させて外側に置いたセンサを動作させる方式です。この方式では磁石の形状を工夫すれば1個のセンサでドエルアングルを決定することも可能です。

しかし磁力や感度の影響を強く受けると思われますので、将来的にPICで1度毎の進角マップを作ったりし始めたら不満が出てくるかもしれません。

とりあえず(いつもこれ・・・)機械物の工作が一番楽に思えた磁石回転型から試験します。

ポイント軸に見立てたM8ナットに円筒形磁石を付けます。このままではドエルアングルがカム軸上で30度くらいしか確保できていません。XSの標準ではカム軸上で90度位必要です。

そこで磁場を変化させるために鉄板を貼り付けてみると、なんとか実用的な動作範囲を形成できました。とりあえずこんな調子で行ってみましょう。


ここには試験用回路図が有ります。

試験用に回路を考えてみました。カム軸上を磁石が回転する方式です。センサに磁石が近づいている間だけセンサがONになります。この間がポイントの「閉」に相当します。

SS433Aの出力を2SA1015で受けます。最終はFETなのでこのままでも十分にドライブ出来るのですが、論理が反対なのと前回の失敗から駆動部をコンプリメンタリ構成にしてみました。

あとは実験的に過大な逆起電力の吸収部分の構成を変えてみました。今までは1500WクラスのサプレッサダイオードをDS間に入れて、ダイオードにエネルギを吸収させて居ました。

今回はダイオードがDG間に入れてあり、過大電圧が加わるとゲート電圧が上がってFET自体がONになり、FETにエネルギを吸収させる方式にしてみました。これなら小容量のツェナーでもOKです。

これはセミトラの件でメールを遣り取りしていた方から提案された方式で、どこかで見たな・・・と思っていたら「パワーMOSFETの応用技術」と言う本に出ていました。直列に入ってるダイオードはゲートからの逆流防止です。

それ以外は各部のノイズなどを見たいので、極力保護素子は入れていません。


ここには試験基板の画像があります。

回路がシンプルなので一番小さな基板に2気筒分入ります。とりあえず1気筒分で試験です。

動作自体は問題有りません。点火に伴うスパイク状のノイズが有りますので、車載までには各部にツェナーダイオードなどを入れて対策しないといけません。

FETの過大電圧対策は巧く動いています。たとえツェナーダイオード経由とはいえ、ゲートと数百ボルトのドレインを接続するのはドキドキしました。でもオシロで見る限りはきっちりとツェナー電圧でクランプされていて、この部分も正常に動作しているようです。


ここには試験用モータの画像があります。

今回の試験のために準備したポイントシミュレータです(笑)。磁石が強力なので、軸のD型切り欠き部に貼り付けただけで数百rpmは大丈夫でした。


ここには放電試験中の画像があります。

さらに進化した試験機です。ジャンク箱を漁っていたら何故か自転車用発電機の中身が有りました。リング状に着磁してあってシャフトまで付いています。まさにこのために用意したように。

小型のボール盤に咥えて回転させると右のように恐ろしい光景が・・・回転数が高いので、「バチバチ」じゃ無くて「ビッィィィィ」という感じの恐ろしい音を立てて放電します。新しめのZZR250用のコイルを使うと15mmくらいは飛びます。ちょっと嬉しくなって息子を呼んでみましたが一定の距離以上は近寄りません(笑)。とても怖いです。


このボタンは、目次に戻るリンクです。