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XS650(XS1B) バッテリー電圧

XS1のバッテリー電圧に関して、私の思うところと言うかセッティングの方向性を書いておきます。条件が似ていれば他のオートバイでも同じ様な物かもしれません。


ここにはシールドバッテリーの画像があります。

参考用として撮影した実験に使っているバッテリーです。俗に言うシールドバッテリーというタイプで補水の必要が無いタイプです。説明を読むと以下のことが解ります。

「STANDBY USE」とは「フローティング充電」などとも表現されている使い方です。バッテリーとは別に負荷と電源が有って、負荷の必要とする電力は全て電源によって賄われます。

定常状態ではバッテリーは飾りです。バッテリーの端子には自己放電分以外の電流は流れません。正常な車やオートバイが安定して走行している瞬間はこの状態に近いです。

「CYCLIC USE」とは充電した後に負荷に繋いでバッテリーを使い、放電してきたら再度充電を繰り返す使い方です。鉛蓄電池で純粋にこの使い方と言えるのは、電動フォークリフトとかバス釣りの電動船外機とかでしょうか。

これは湯浅の製品ですが目的によって充電電圧が違います。「STANDBY USE」では13.65Vの定電圧を維持するようになっていますし、「CYCLIC USE」では14.4V-15.0Vの定電圧で充電するようになっています。他のメーカーでも似たような電圧です。


さて、オートバイの使用条件はどちらになるのでしょうか。安定して走行している瞬間は「STANDBY USE」に近いと思われますが、毎日乗らないでたまに乗るだけであれば「CYCLIC USE」に近いと考えられます。もしチョイノリばかりで放電気味と言うならば、「CYCLIC USE」でさらに充電不足であると想像できます。

メーカーのマニュアルを見てみます。私の元には古いヤマハ車が中心なので偏っているかもしれませんが、機械式のレギュレータの時代で14.5V±0.5Vが調整範囲。電子式レギュレータになってからは14.5V±0.3Vが調整範囲。といった感じでした。この電圧から想像すると、メーカーが想定したユーザーの使用条件は「CYCLIC USE」に近いと考えられて居るようです。

私が使っているXS1の標準は開放型の鉛蓄電池です。密閉型とは構造や補水面での多少の違いは有りますが、充電電圧に関してはメーカー資料でも大きな差は有りません。

定電圧で過充電した場合は多少の過充電の範囲であれば密閉型の方が充電末期の充電電流は少なくなるようなので、きちんとレギュレート出来ている場合は開放型から密閉型への交換は大きな問題は無いと思われます。


私のバイクの場合ですが、上記の色々を考慮してエンジン回転中のバッテリー電圧で14.5V近辺を目標にすることにしています。基本的にメーカー標準とも言えますし、たまにしか乗らないので自己放電などの分を「CYCLIC USE」として走行中に充電して居るとも考えられます。

その他の要因としては、イグニッションのエネルギーがバッテリー電圧の2乗に比例して増えて来ます。冬の充電受け入れ性能が低い時の事なども考慮すると、どちらかと言えば迷ったら高い方・・・と言う感じの判断になっているのも事実です。

もし私がドイツに住んでいて毎日アウトバーンを走って200kmの通勤をしている場合、日本とは違った判断をすると思います。この場合はどちらかと言えば「STANDBY USE」に近いと判断して13.8V位を設定電圧にするのでは無いでしょうか。


バッテリー電圧はこのように判断して14.5Vをターゲットにしました。イグニッションはこのままぶち込んで知らんぷりです。しかしヘッドライトの方は少し問題が有るかもしれません。

電球は過電圧によって一気に明るくなりますが寿命も縮みます。以前のXS1にはハイ・ロー共にリレーを入れてバッテリーから太い線で直接給電していました。その頃は昼間点灯は無しです。

最近の昼間点灯を考慮すると、14.5Vからリレーと太い線で給電することがメリットばかりじゃ無いように思えてきました。14.5Vは標準的なハロゲン球に取って少し過大な電圧です。明るくは有りますが寿命が問題です。

と言うことでリレーを外しました。電線の電圧降下を逆に利用してハロゲン球の印加電圧を適正範囲内に納める為です。バッテリーの電圧は使用条件から決定して、ライトの電圧はハロゲン球のスペックを越えない範囲に別の手段で押さえようという思想です。

多少暗くはなりましたが、問題なく車検も通ったし以前のように夜中にガンガンに走ったりはしないので問題なしです。


ライト廻りの電圧を測定してみました。

エンジン回転中でバッテリー端子電圧が14.7V前後にコントロールされているときに、ロービームバルブの両端電圧が13.06V-13.12Vでした。ハイビーム時は12.99V-13.09Vでした。

想像以上に良い状態です。私のXS1にはマーシャルのヘッドライトとH4バルブを入れています。H4の設計電圧がいくらか解りませんが、PIAAのライト用DC-DCの説明には13.2Vで設計されていると書かれています。スタンレー系の「ちょっと無理して明るくした」と思われるバルブには、リレーなどを追加して電圧降下を減らしたりしないように注意書きも有ります。

H4バルブは13.2Vくらいがメーカーの設計電圧と考えて良いのかもしれません。そう考えると今のXS1は悪くない範囲に入っています。機械接点の抵抗増加などを定期的に監視しながら、今のままで継続使用することにしました。


2008年05月21日追記

JIS-C7506-1の中に自動車用電球の試験電圧に関する記載を見つけました。公称12Vの電球に関しては、H4等のヘッドライト球は13.2V。信号用やメータ照明用などの電球は13.5Vと成っていました。

明るさが必要なヘッドライト球の方が試験電圧が低いのは妙ですが、消費電流に応じて配線の電圧降下が有ることを考慮したのかな?と思っています。その他、13.0Vとか12.8Vとか14.0Vが試験電圧に成っている球も有りましたが、使ったことがない球なので理由や用途は深く追求していません。

取りあえず今のXSの印加電圧はJISの試験電圧にほぼ等しい事が解って一安心です。現実問題としても最初に記事を書いてから2回の車検を経験していますが、何れもリレーなどの付加装置無しで試験に合格しています。取りあえず問題のないレベルに有るのでしょう。


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