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XS650(XS1B) FETは何故壊れたのか

決戦用(笑)として買ったFETが連続して壊れてしまいました。しかも同じ様な壊れ方で。いくら遊びとはいえ原因を究明しなければなりません。

とりあえず未整理でも実験の結果などのメモ置き場。


dv/dtによる電圧

試しに計算をしてみます。別の測定と実験からこのコイルの1次側インダクタンスは15mHと解っています。これに定常状態で3Aの電流が流れています。2SK2847のターンオフタイムは95nsです。これらから計算される理論的に最大の逆起電力は V=(15/1000)*3/(95/1000000000)=473kV

実際のゲート波形では立ち下がりに20usくらいかかっているのを前提に再計算すると、 V=(15/1000)*3/(20/1000000)=2.25kV・・・けっこう近いかも。色々なロスやコンデンサ成分への充電などを考えると、1kVに落ち着いてもおかしくないのかもしれません。

L=6.5mH、R=2.785Ωのコイルに14V印加されていると、I=14/2.785=5.03A
これを時間tでオフにしたときに600Vが発生すると考えると、
V=(6.5/1000)*5.03/t=600V
t=55.0us となる。

入力容量8310pFと抵抗Rで時定数が55usになるには
55E-6=8310E-12*R
R=6.62kΩ となる。


2SK3192での試験。

ここには点火波形があります。

教科書的な点火波形。容量成分のピークが300V弱まで達している。誘導成分の電圧は30Vくらいで持続時間は1.2ms程度。周期は14msなので4st単気筒なら8,570rpmに相当。ドエルアングルはカム軸で90度くらい。

このFETの耐圧は250Vなの耐圧を越している。実験的にサプレッサダイオードを付けずにアバランシェ降伏を起こさせている。


ここにはアバランシェ降伏の画像があります。

はっきりと降伏状態を作るために、スパーク出来ないようにコードをアースから引き離して撮影した。

290Vくらいで降伏しているのが解る。このままで数十分放置してもFETはほんのり暖かいだけだし壊れない。このFETはタフだと思う。通常の点火ならここまで容量成分のピークが上がる前にプラグで放電するから、ひょっとしたらサプレッサダイオードも要らないかもしれない。あくまで素人の遊びの範囲ではね。

アバランシェ降伏のエネルギーとして、最大値でイグニッションコイルのインダクタンスと最大電流を考えていたけど、この波形から考えるとそれの1/10とかで良いんじゃ無いかと思ってしまうが間違って居るのだろうか。

もう少しバッテリー電圧を下げたらピークが280VくらいになってFETは降伏しない。その場合はエネルギーはどこに行ったのだろう。これが解らない。1次と2次のインダクタンスやコンデンサ成分に蓄えられたとしても、それだけじゃ消費はしない。と言うことはリーク電流として流れて居るのだろうか。


どのくらいゲート駆動を鈍らせたら容量成分のピークが下がるかの試験。

ゲート抵抗を10kΩまで増加させても290Vまで上がってしまう。

ゲートに並列に0.1μFのコンデンサを付けて再トライ。

0.1μFにゲート抵抗1kΩでは250V

0.1μFにゲート抵抗4.7kΩでは135V

0.1μFにゲート抵抗10kΩでは60V

何とか下がったけど、ゲート駆動波形は三角波に近い形まで鈍らせる必要が有った。スイッチングロスでFETは熱くなってしまう。結局FETのゲート電圧はある閾値があって、それを境に一気に導通・非導通が切り替わっているイメージ。

この手法ではdV/dtを小さくすることは実用的じゃ無い。

あと考えられるのは、ポイントと同じようにDS間にコンデンサを付けること。でもこれはやりすぎると性能低下を招くだけになってしまいそう。巧くセッティング出来れば、高価で入手性の悪いサプレッサダイオード無しで実験できる面白さがあるかもしれないけれど。


2007年03月29日追記

色々と書き散らかして来ましたが、上記の何れよりも大きな影響力を持つ原因が解りました。容量放電による電流が引き起こすノイズです。

特に同時点火では無い、コイル一次側と二次側が共用に成っているシステムでは顕著です。ノイズと言うよりも電源など全てが大きく揺さぶられると言った方が良い状態です。

何故気がつかなかったかと言えば、非常に短い時間で有ることと、その辺に変な髭が有るのは解っていたのですが、オシロのプローブを何処に近づけても同じように髭が出てくるので、プラグコードとプローブの容量的な結合とか、火花放電によるなにか電磁的な影響でオシロが誤検出していると思いこんでしまったわけです。

たまたま抵抗入りのプラグコードを使った試験をしたところ、上記の髭がほとんどでないことから、あれれ??と成った次第です。

一度、頭とデータをリセットして、もう一度検証を始めようと思います。



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