RIGHT STUFF, Inc.

Right Stuff Wrong Stuff


XS650(XS1B) クラッチレバー・ブレーキレバー

クラッチレバー支点のガタが酷くなってきたので修理しました。ついでに同じ構造のブレーキレバーも処置しておきます。

レバーを買い換えれば済むのですが、広がった支点の穴にブッシュ(機械屋的にはブシュかも・・・)を入れて再生することにしました。こうしておけば次回はブッシュを入れ替えるだけでリフレッシュできます。

支点部の8mmの穴を10mmにするのですから、周辺の厚みが減ってしまいます。このことによる剛性・強度低下が一番不安だったのですが、作業の課程で11mmのブシュが圧入してある製品を発見し、これよりも小さい10mmの穴なら問題なかろうと判断しています。


ここにはレバーの比較画像があります。

ついでなので手持ちの予備品なども一緒に作業することにしました。手順としては楕円形に広がったレバー穴に9.8mmのドリルで下穴を開け、次に10mmのリーマを通してH7からH8程度の穴にしておきます。

次にφ8xφ10x8Lのブッシュを圧入して完成です。レバーの厚みは実測で7.5mm程度なので、ホルダに挿入してみて気になるようならブッシュの長さを0.5mmほど削る事にします。

左はXS1に付いていたレバーです。支点部には黄銅系か青銅系の合金が鋳込んであります。上に載っているのは交換用の新しいブッシュです。

中央はXS650Eから外してきたレバーです。こちらも鋳込みかと思っていましたがちょっと見た目が違いました。9.8mmのドリルで揉んでいると抜けて来ました。φ8xφ11のブッシュが圧入してあったみたいです。11mmの穴が開いてしまったので今回は作業できません。

右はTX650に付いていたレバーです。支点部には何もありません。単なるコストダウンかもしれませんし、アルミ合金の性能アップでこちらの方が耐摩耗性が良くなっているのかもしれません。一体型なので強度的にはこのレバーが一番強かったのは明かです。上に載っているのは交換用の新しいブッシュです。

いずれも私が見つけたときに装着されていたと言うだけで、それがヤマハのオリジナル装着部品とは限りません。それまでに誰かが他車用と交換しているかもしれないし、もしかしたら社外品が付いているかもしれません。

個人的な好みとしては、軸受け剤が綺麗に鋳込んであった一番左のレバーが好みです。

今回圧入するブシュは「オイレスドライメットLF」を使ってみました。内側から、四ふっ化エチレン層、青銅焼結層、バックメタルの三層巻ブッシュです。


ここにはピンの比較画像があります。

各種の支点ピンです。同じヤマハの支点ピンなのに、私の手元にあるだけでこれだけの違いがあるのは興味深い事実です。

一番左はXS1に付いていたピンです。M6の全ねじボルトに内側に雌ねじを切った黄銅系?のスリーブが被せてあります。

左から2番目はXS650Eから外したピンです。ストレート部のあるM6ボルトに内径側もストレートの黄銅系?スリーブが被せてあります。

右から2番目はTX650から外したピンです。スリーブの材質が鉄系に変わっています。固着が固くて分解してません。従ってスリーブの内側に雌ねじが切ってあるかどうかは解りません。

TX650のブレーキ側に付いていた?ピンです。スリーブ構造ではなくて全てが削り出しになっています。またスリーブの長さも長くなっていて、ホルダ下側までφ8が貫通するような設計に成っています。

レバーと一緒で途中の経歴が解らないために、これがオリジナルの装着部品とは限りません。

各構造に設計者の悩みが見えてくるようです。個人的には摺動部が鉄系に成った右側2個が好みです。一番右側がシンプルで好きなのですが、XS1のホルダに組み合わせるにはピン下側のM6不完全ねじ部が気になります。とりあえず今回は右から2番目を使う事にしました。将来的にはジグ用などでSUJ2のスリーブ等を探してきて、耐摩耗性の高い相当品を作るのが良いような気がします。


ここにはホルダー側の画像があります。

ついでなのでユルユルに成っていたホルダ下側の雌ねじを修理しておきました。ここの板厚は3mm強しか無いのにM6のねじが切ってあります。しかもアルミです。設計的に少し無理があるような気がします。

喰い切りで短く切ったヘリサートを入れて修理します。どうしても半巻くらいは飛び出てしまうので、飛び出た部分はリューターで平らに削っておきます。結構面倒な作業でしたが、しばらくは安心して使うことが出来ます。


結果は大変満足できる状態になりました。ピンは中古を使いましたが、それでも劇的にガタが減りました。現時点ではほぼゼロです。操作したときにもダイレクト感が有ります。

次回ガタが出たときはブッシュを打ち抜いて交換するだけです。どうして最初からこういう構造にしないのだろうか?と不思議に思いますが、そう言うコストアップを今の市場は評価してくれないのでしょう。

ここにコストを掛けるよりもコストダウンして安い方が市場に受ける。そのコストをレバーのバフがけに費やしてピカピカにした方が市場に受ける。その費用で人気のあるタレント使ってCM作った方が売れ行きが期待できる・・・そんな理由かもしれません。


このボタンは、目次に戻るリンクです。