RIGHT STUFF, Inc.Right Stuff Wrong Stuffハブダイナモを使った7.2Vフローティング充電式ヘッドライト 普段、買い物やプールの往復などに使っているロードには、シマノのライトを改造した7.2Vフローティング充電式ヘッドライトを使っていました。長距離練習の一環としてブルベ走行会に参加するのを契機に、現物と資料を纏め直しておきます。
トータルの平均時速は20km/hを想定しました。昼間は20km/hで走行してチビチビ充電し、夜間は同じく20km/hのリアルタイム発電にプラスしてバッテリーからの給電で補助する考え方です。車やオートバイの電装系とほぼ同じ思想になります。 以前の測定結果から平均時速20km/hで巡航した場合、シマノのNEXUS HB-NX-20-QRは7.2Vで0.43A程度の出力があると予想されます。もし充電効率が100%で昼と夜の時間が丁度半々で、昼間に発電した電気を全て保存できる容量のバッテリーが準備できた場合、夜間は7.2Vで0.86Aの電球を駆動できる計算に成ります。しかしこのような理想的な状況はあり得ないので、現実的なシステムの検討を行います。 電球は懐中電灯用として入手が容易な7.2Vで0.55Aのクリプトン球を使うことにします。この電球を夜間12時間使った場合、発電側は0.43Aしか供給できませんから0.55-0.43=0.12Aが不足します。この不足分をバッテリーから供給すると考えると、12時間では0.12x12=1.44AHの容量が必要と成ります。7.2Vで1.44AH=1440mAHは2000円以下のラジコン用バッテリーで賄える容量です。 次に充電時を考えます。昼間の発電を全て充電に回すとすれば、0.43x12=5.16AHの発電量があります。これに対して必要な充電量は1.44AHですから、充電効率が28%でもフル充電可能な範囲です。
以上より、それなりに現実的な範囲でシステムが構成できそうな手応えが出てきました。入手性などからそれぞれのスペックを決めていくと
回路図です。ハブダイナモからの単相交流はショットキーダイオードのブリッジで整流されてバッテリーにそのまま給電されます。トラブルの発生源を少なくする意味でシンプルが一番です。レギュレータは無しでバッテリーが電圧変動を吸収します。シンプルであれば修理も簡単です・・・と書きながら本当はめんどくさいと言う理由が一番大きいのですが。 ショットキーダイオードは手元にあった50V-1A品を使いました。500mAを流したときの1個の電圧降下は0.37Vです。ブリッジなので行きと帰りで0.74Vのロスになります。出力側に7.2Vを出すには7.94Vの入力が必要となり、この部分の効率は90.7%です。 フローティングで使うなら、ニッカドやニッケル水素よりも鉛蓄電池の方が適しています。しかし鉛蓄電池は希硫酸の管理の問題など別の問題も有ります。ラジコンみたいに厳しい使い方はしないのだから、ニッカドのフローティングでもまあ良かろうと言う所です。 整流器と電池の間にある四角いのはコネクタです。ここはラジコン用をそのまま使います。そうすればコストパフォーマンスの高いラジコン用の7.2Vバッテリーパックがそのまま流用できるからです。 この部分にはスイッチを設けず、過充電になりそうだと判断したら手動でコネクタを外します。「面倒なことや判断が難しいことは人間に聞け」というシステムです(笑)。 特に防水は考慮していません。7.2Vくらいでは100Vや200Vの様に漏電で放電したり加熱したりと言う心配は無用です。長時間放置していれば不純物を含んだ水による電気分解的な事や、単純な錆が若干進むだけです。1日雨の中を走ったらメンテする自分用ですから防水無しでもOKと判断しています。市販されている車やオートバイでも、単純な12V系では防水を考慮していないコネクタは沢山あります。
改造元はキャットアイのHL-500です。単2型2本のタイプですが改造してしまうので電池は関係有りません。問題なのは電球の口金の形状です。単1電池6本の強力ライトに使用されている「7.2Vのピリケン球」と同じ口金の形状で有ることが重要です。 電池の部分には整流用のダイオードブリッジが入っています。スイッチはHL-500のオリジナルをそのまま利用します。配線やダイオード関係に振動によるトラブルが発生しないよう、ホットメルト系の接着剤でポッティングしておきます。 このライトの設計仕様は1.25Wのハロゲン球です。今回はそこに7.2V-0.55Aとか0.75Aとか0.86Aの電球を突っ込んでみようと考えている訳です。今までに2時間までの試験をしましたが、それ以上の使用ではどこかに熱による損傷が発生する可能性があります。
20年くらい前の古いロードに装着した画像です。トップチューブ下のバッテリーパックは間に1.5mmのスポンジゴムをはさんだうえで、ビニールテープで固定しています。 数ヶ月のスパンであればビニールテープは振動下の固定にかなり有効だと思います。スパンが数年に成ると耐久性の面で問題が出てきますので、定期的な交換とか他の恒常的な固定方式を検討する必要が出てきます。
200kmブルベの走行会で使ってみた時の画像です。夜間走行は無かったので充電しながら走っただけです。鈍い私は特に重いとは感じませんでした。200kmを8時間34分で完走できました。ただ下りの速度の乗りは良くないような気がしました。 ハンドルの右側にライト、左側にGPSをセットしています。地図とかキューシートをハンドル前に設置するなら、ライトはそれよりも下に移動する必要が有ると思います。 今まではもっと下のクイックシャフトにシマノのライトを設置して居たのですが、その高さだと路面を照らす角度の調節が敏感だと感じました。その位置に比べるとハンドル位置への設置は角度がかなりアバウトでもOKです。 今後、夜間走行が必須となるブルベに参加するかどうかは解りませんが、日常のトレーニングとかプールの往復には使いますから、この辺りはボチボチと詰めていこうと思います。 もし400km以上のブルベで複数のライトが必要な場合、明るくはないけど電池寿命の長いLEDライトを併用するのが良いような気がします。でも実際に出たことが無いので本当のところは解りません。
写真は上手に取れませんでした。人間の目とカメラの差があるのかと思いますが、目で見た限りではここまで明暗の差は無くて普通に使えます。定量的でない言葉で表現すれば(笑)相当明るいです。レンズや反射鏡の違いはありますが、単1を6本使った強力ライトと同じなのだから当然と言えば当然です。 一番下の息子の自転車にはシマノのLP-R600を付けています。このライトはハブダイナモの発電量が少ない低速域を低消費電力のLEDで補い、高速で発電量が増加すると9.6V-5Wの電球が明るく路面を照らす設計に成っています。 高速域では7.2Vや12Vで駆動した方が明るいのは以前の実験で解っていました。「お前のこのライトが発売される前から、お父さんはこうやって実験して高電圧駆動をやってたのだ。エッヘン」と言っては見ましたが、どうも内容を理解できて居ないようでした。情け無い息子です(笑)。 理屈で感動できない息子を力でねじ伏せるため、夜中に息子の自転車と併走してやりました。LP-R600と比べると雲泥の差です。停止中や極低速域でも明るく路面を照らして居ることも感覚に強くアピールしているように思います。HL-500IIと比べても問題になりません。2007年春の自分用としては、価格や入手性などを含めたトータル性能でこのシステムが一番だと感じています。
現時点で電気店やホームセンターで容易に入手できる7.2Vの懐中電灯用電球です。 私はGPSも駆動する予定があるので、この中では最も省電力の0.55Aのクリプトン球をメインに使うつもりです。ライトオンリーで平均時速が20km/hをオーバーするようならば、0.75Aの方がマッチしているように思います。 また、300kmブルベなどで夜間走行時間が短いことがあらかじめ解っている場合は、収支のバランスが取れていないことを承知の上で、0.85Aのハロゲンを使う選択も有りかと思います。 街中の通勤・通学で15km/h前後しか出ていない場合には、電池を4本にして電圧は4.8Vで使った方がマッチングが良好に成りそうです。
時々頂くメールではLEDを使えと言う内容が多いです。長男のライトはLEDです。人一倍こう言う物には興味はあるので実験することも有ります。他の人のライトやLED懐中電灯を見せて貰ったり店頭で触る機会もあります。時代を追う毎に明るくなってきているのは感じます。しかしそれ以上にLEDへの過剰な期待感と過剰なPRを感じてしまってうんざり気味なのも確かです。 冗談のようですが長男のライトを買うときに自転車屋では「明るすぎて光が目に入ると目が潰れる」と言われました。でもどう比べてもHL-500IIの方が明るかったです。。。新製品が出る度に「明るすぎて迷惑」とか「明るすぎて危険」等の主観的で刺激的な言葉が氾濫します。しかしウェルチェアレンの10W-HIDよりもこんなに明るいとか、ナショナルの強力ライトと比べた写真等の単純な比較にすら中々出会えないのが事実です。 ハイワッテージLEDに関しては、具体的で定量的な評価がもう少し増えてきて、価格が相当下がるまでは散財を止めておこうと思っています。
2007年06月25日追記 300kmのブルベ(走行会)に参加するにあたり、ライトをダブルにすると共にコネクタを全て統一してトラブル時に組み替えが出来るようにしました。ライトとは関係有りませんが、GPSの電源もこのバッテリーから取るようにしました。
ハンドル上はHL-500改で7.2V-0.75Aのクセノン球が入っています。300kmなので点灯時間が短く、0.75Aでも良かろうとの判断です。ハンドル下はシマノのライト改です。こちらはオリジナルがねじ式の口金仕様ですが、改造して懐中電灯用のピリケン球が使えるようにしてあります。こちらは7.2V-0.55Aのクリプトン球です。 GPSホルダの横に小さく写っている黒い小箱は、eTrex用の3.0Vを作り出すDC-DCコンバータです。最初期型のeTrexを使いましたので、出力側で3.0V-130mA程度の消費があります。効率が100%では無いので入力側は7.2V-70mA程度必要です。
300kmに使用した回路図です。全てのコネクタはRC用の7.2V電源に使われている、通称タミヤコネクタと言われているタイプです。どこかが故障しても取りあえず残りが使用できますし、回路にぶら下がっていると不味いような故障の場合でもコネクタで切り離して残りで運転可能です。 このときは08:00出発で21:13にゴールしました。明るいうちの負荷はGPS用の70mAです。残りはバッテリーパックの充電に回されます。過充電に成りそうと判断したら電池のコネクタを手動で(笑)抜きます。今回は最初が満充電では無かったので、コネクタは挿しっぱなしで走りました。 夜間の消費電流はGPSとライトの両方がぶら下がります。さらにGPSはバックライトを点灯しますから昼間より増大します。当然ハブダイナモだけでは供給が追いつかないので、今度は電池パックからの持ち出しに成ります。今回は早い時間帯にゴールできそうだったので、0.75Aの方を常用しました。さらに峠の下りでは0.55Aも追加で点灯しました。 夜になって丁度キャットアイの製品を装着した人と前後して走る事になりました。彼はメインにHL-EL520を使いサブにHL-EL130を使っていました。私の感想としては7.2V-0.75Aを入れたHL-500改の方が明るいし配光もワイドで使いやすいと感じました。EL520を使っている彼も、「そのライト明るいですねぇ」とか「何ワットですか?」等とたずねてきたので、同じ様な感想を持ったのでは無いかと思います。 だからといってLEDよりも電球の方が明るいと言っているわけでは有りません。7.2V-0.75Aだと5.4Wも使っていますから、60時間!?使用できるEL520と同列に語るわけにはいきません。良くできた250ccのオートバイと5000cc位のアメ車を比べて、アメ車の加速スゲーと言っている様な物です。 既にハブダイナモを装着している私の場合、ダイナモ単独使用で3W程度の電力を、昼間の充電と併用すれば6W程度の電力を利用可能なわけです。そう言う場合なら安くてシステムも簡単な上記の電球式は良い選択だと思います。 例によって鈍いのでハブダイナモがそれほど重いとは感じませんでした。しかし私もバカじゃないので、昼間だけの順位が付くようなレースにハブダイナモを使おうとは思いません(笑)。それ以外の環境であれば、自分だけ数Wは余分にトレーニング出来ていると考えれば、これまた悪くない選択肢です。 高効率のLEDが安くなっていることを教えて貰いました。今後は上記の電球をLEDに置き換えた物も考えていきたいと思っています。 |