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GT-10AAの改造

このライトは私が数年前に広島を離れるとき、その頃お世話になっていた方が自分用に使っていたのをプレゼントしてくれた物です。直径が小さいのでバイクの整備で覗き込む様な時に便利に使っていました。パトリオプロとも書かれていて、腰に付けるホルダも付いていました。

最近は夕食後に嫁さんから散歩に連れて行かれるために、その時のお供がメインの用途と成ってきています。約3kmの距離を歩くのですが、1800mAh〜2000mAhの電池が3-4日で無くなってしまいます。ちょっと面倒に感じてきたので改造をしてみました。


ここには改造前の画像があります。

改造前のLEDと駆動回路です。単三電池2本を電源として、DC-DCコンバータでLEDに必要な電圧を発生させて居るようです。

プラス側は基板に半田付けされた端子へ電池の+極が直接接触します。-極はお尻の電池キャップにスイッチが組み込まれており、スイッチでコントロールされた後はアルミの筐体を通って基板部分まで届きます。

LEDは放熱器を兼ねた基板に装着されており、その裏側には熱伝導版と-極を兼ねた丸い金属板が重なっています。良く考えられたレイアウトで感心します。


ここには回路図があります。

回路図を起こしてみました。ICの表面が削り取られており、型番が解らないようにしてあります。最後のシリアル番号?だけが残っていたので、かろうじて1番ピンの位置が推測できただけです。

型番は解りませんが周辺の部品からだいたいの動作は解ります。4番ピンがスイッチング用の端子で内部にTrかFETが入っているのでしょう。7番ピンは電圧フィードバック用の端子です。3番は電源と思いますが、昇圧後に持ってきているのは少しでも高い電圧を入力する為でしょうか。

2番ピンの機能と220Ωの抵抗の意味は良く解りません。ICの型番がピン配置から私が想像しているフィリップス社のTEA1208Tだとすれば、この抵抗はピーク電流の規制用に成ります。

回路的には一般的なステップアップコンバータだと思われますが、相手がLEDと言うことで定電圧ではなくて定電流制御に成っています。定電圧で出して抵抗やCRDを付けたりしたら、せっかくの高効率が意味がありません。当然と言えば当然の構成かと思います。

すこし凝っていると感じるのは電流検出抵抗の部分です。このICをそのまま使った場合、実測値では7番ピン電圧で1.19V程度にコントロールされるみたいです。1.19VをLEDと直列に入れてしまった場合、LEDの順方向電圧が3.0Vとすれば3.0/(3.0+1.19)=72%の効率に成ってしまいます。DC-DCコンバータ部分の効率が90%有ったとしても、これではLEDに対する効率が64%まで低下します。これでは簡単に抵抗を入れた回路に十分負けてしまう様な値です。

そのためにこの回路では検出部分の電圧は0.16Vと低めに設定しておき、不足分の1.03Vは別の回路から持ってきて下駄を履かせてあります。制御のゲインが低下するかとは思いますが、相手はLEDの明るさなので大きな問題では有りません。それよりも効率が上がった方が良いとの判断でしょう。定電圧部分は1.23V程度なので、LM385-1.2等のバンドギャップリファレンスかと思われます。


ここには加工したLED基板画像があります。

回路構成が解ったので改造方針を決めます。手元に自転車ライトの改造用に購入したCreeが残っています。コイツの方がLEDとして明るそうなので換装し、明るくなった分は駆動電流を減らして電池の持ちを良くする事にします。

考え方としては明るいままで使っても良いのですが、歩道を歩くには今の明るさで十分だし、一番の不満は電池の持ちなので上記の方針としてみました。

このCreeは購入時点で既にアルミの基板上に載っています。アルミ基板の直径が少し大きすぎたのでグラインダーで周囲を削り、ライトの内径に合わせました。

後は基板を押さえる金具がアルミ製なので、上面の電極がショートしないようにパターンをカットしておきます。そのために配線はCreeの上の電極に直接半田付けします。

配線を通す溝が少し浅かったので、丸ヤスリで2カ所だけ深めに溝を追加工しておきました。


ここには改造した基板の画像があります。

DC-DCコンバータ部分の改造です。試験的に点灯してみたところ、オリジナルのLEDよりは明るいことが確認できたので消費電流を低減させる改造に移ることにしました。

回路図中の0.47Ωが電流検出です。この部分には実測で0.16Vの電圧が加わっていました。オリジナルの回路ではI=0.16/0.47=0.34Aの電流が流れていました。

ここの抵抗を大きくして電流を減らしたいわけですが、手持ちには1Ωしか有りません。しかもチップですら有りません。仕方ないので取りあえずこれを付けて見ました。改造後の電流はI=0.16/1=0.16Aと半分程度に減少することになります。

入力側の電圧と電流を測ってみたところ、ニッケル水素2本の2.5Vで250mA程度流れていました。2000mAhの電池なら8時間点灯できる計算に成ります。入力側の消費電力は0.625Wです。出力側は測定していませんが、LEDのVfが2.9Vまで落ちていると仮定すると、P=(2.9+0.16)*0.16=0.490Wです。効率は改造前と大差ないはずですが、η=0.490/0.625=78.4%となります。


ここには筐体に装着した画像があります。

組み込んだ状態です。リード線の半田付があやしいですが(笑)、自分の散歩用なので取りあえずこれで試してみます。


実際に使ってみた感想ですが、光学的には明るい部分の直径が少し小さくなってしまいました。今までの配光に慣れていたので少しだけ違和感があります。しかしこれは直ぐに慣れる程度の差です。逆に遠くまで光が届くように成っているので、これはこれで使いやすい局面もありそうです。

明るさは電流を半分にしたにもかかわらず、Creeに換装した後の方が明るいとさえ感じられます。少なくとも今の段階では暗くなった感じは一切ありません。今後、中央の明るい部分がもう少し広がるように光学系を弄ったりした場合、もしかしたら少し暗いかな?程度は感じるかもしれません。

消費電流は確実に半分に成っていますので、散歩のための充電頻度が半分になりました。これが一番ありがたい部分です。


ここには再改造した基板の画像があります。

上記の改造が割と具合がよいので、さらに自分の用途に対して最適化を進めてみました。

大きな変更点は電流検出抵抗の値を0.47Ω→1.0Ω→1.2Ω→1.5Ωと最終的に1.5Ωまで増加させました。これによってLEDの電流はI=0.16/1.5=107mAまで低下しています。これに伴って電池側の消費電流も2.5V時に160mAまで低下しました。

当然明るさも低下しているのですが、107mA駆動でも田舎道の散歩には丁度の明るさだと感じます。これ以上暗くはしたくない感じです。電池側の消費電流が160mAまで低下していますから、今でも使っている1600mAhの古いニッケル水素でも10時間同じ明るさを保てます。2000mAhなら12.5時間とほぼ一晩中明るさを維持できる計算になります。

別の改造部分は入り出側のコンデンサとピーク電流規制用の抵抗です。入り出側のコンデンサは10V-10uFの電解コンデンサと思われる物が付いていました。これを10uFのセラミックコンデンサに交換してみたのですが、特定の電圧で発振気味になってよろしくありません。色々悩みましたが最終的に元に戻しました。

ピーク電流規制用の抵抗は220Ωが付いていましたが、消費電流が減ったことに合わせて470Ωに交換してみました。電池電圧を思いっきり下げて試験すると差が出ますが、普通に2.4V前後で使っているうちは差が解りません。


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