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単相半波整流レギュレータ

ガレージに転がっていた正体不明の「レギュレータの様な物」を調べてみました。マイレッジマラソンの時に解体屋から集めてきたエンジンの一部かと思いますが、今となっては何の部品なのか全く解りません。ご存じの方が居られましたら教えてください。


掃除した後は、取りあえず端子に番号を打っておきます。本体はどの端子にも接続されていませんし、私が測定した限りでは内部回路の何処にも接続されて居ないようです。

ここには6Vレギュレータの画像があります。

いつもの様に手持ちの機材と想像力を駆使して中身を考えていくわけですが、コイツの正体は6V系のレギュレータとレクチファイヤが一体に成った物で、半波整流、半波のみサイリスタで短絡制御、のタイプでした。電圧の検出は交流側では無いかと推測しています。このまま動くわけで有りませんが、基本的な構成はこんな感じかなと感じました。

ここには回路図があります。

1-3間は典型的なダイオードの特性です。
2-3間はどちらの極性で有ってもμAの単位も流れません。
2→1間は何も流れません。
1→2間は8Vくらいから電流が流れ初め、9.6Vで5mA程度に成ります。それ以上になると導通状態に成って自己保持します。
1-2間に電圧を印加しているときに、2-3間に電圧を印加してみても何も起こりません。
以上より、こんな回路じゃ無かろうかと想像しているわけです。


制御されていないときの入力側波形です。 ここには波形データがあります。

制御されて居ないときの出力側波形です。バッテリーは接続して居ません。負荷を接続して測定してみると、電流が1Aの時に整流ダイオードのVf=0.86Vでした。 ここには波形データがあります。


少しだけ過電圧制御が入った時の入力側波形です。単相交流の片側だけが短絡制御されていることが解ります。綺麗に0Vまで落ちていないのは、サイリスタのVfだけ残っているからでしょう。この電圧は1.25Vくらい有りました。 ここには波形データがあります。

少しだけ過電圧制御が入った時の出力側波形です。 ここには波形データがあります。


大きく過電圧制御が入った時の入力側波形です。 ここには波形データがあります。

大きく過電圧制御が入った時の出力側波形です。 ここには波形データがあります。


セレン整流器で半波整流してバッテリーに突っ込んでいた時代から、整流器がセレンからシリコンダイオードに代わり、その次の段階として過電圧制御が入ったタイミングの製品と考えたら良いのでしょうか。

バッテリーで駆動するのはウインカーとストップランプくらい。それにモデルチェンジ前のオルタネータの片側はアースに落ちているから変更するのは面倒くさい。半波整流のままで過電圧制御だけ入れましょうや・・・的な設計思想かもしれません。

古い半波整流のみのモデルで過充電・過電圧気味に成ってしまう場合、単純なレクチファイヤをこのタイプのレギュレートレクチファイヤに交換すれば好結果が得られる可能性が有ります。その場合はオリジナル車に存在しない2番のアースを追加する必要性が出てきます。

同じ様な半波整流のオートバイであっても、充電が不足気味の場合はこういったレギュレートレクチファイヤに交換しても意味がありません。レギュレータでは発電量を増やすことは出来ないからです。やるとすればオルタネータの接地側を外して全波整流のレクチファイヤに変更する位でしょうか。

このレギュレートレクチファイヤの出力側にはピークで9Vを超える脈流が出ています。正常な鉛蓄電池であればこの程度の脈流は問題なく吸収してしまい、7V程度の電圧を維持します。しかしバッテリーレスと称して単純なコンデンサに交換してしまった場合、負荷とのバランスによってはピーク電圧までコンデンサは充電されます。この高電圧が他の機器に影響が有るかもしれません。



検証の意味で12V用の単相半波整流、半端コントロールのレギュレートレクチファイヤを作ってみました。

電圧検出部はXS用のレギュレータを試験したときの残りがあったので、それに逆流防止用のダイオードを追加して流用してみました。回路はこんな具合です。取りあえず動作の検証用なので、回路の考え方や定数は最適では無いと思います。

ここには12V用回路図があります。

こんな感じに出来上がりました。SCRに放熱器を付けていないので、長時間の短絡試験は無理があります。

ここにはテスト基板の画像があります。


正体不明品と同じように、入力側と出力側の波形を見てみました。

若干、過電圧制御が入った状態での入力側の波形です。 ここには波形データがあります。

出力側の波形です。予定通りの動作をしているようです。 ここには波形データがあります。


上記は何れも無負荷の状態でしたが、以下は出力側に12Vのバッテリーを接続した状態の波形を示します。バッテリーは実験用にかなり使い込んだシールタイプの鉛蓄電池です。

過電圧制御が入らない状態の入力側の波形です。プラス側とマイナス側の波形が違います。無負荷のマイナス側は-19V近く出ていますが、バッテリーに繋がったプラス側は15V程度しか出ていません。この部分はバッテリー自体の安定化作用に依るものです。

弱い電源に強力なバッテリーを組み合わせれば、安定化作用は顕著になります。逆に強力な電源に貧弱なバッテリーだと、安定化作用は弱くなり、無負荷の波形に近くなります。 ここには波形データがあります。

もう少し電圧を上げて過電圧制御が入った状態の入力側波形です。
こちらも無負荷の時とプラス側の波形が違い、バッテリーだけでは吸収しきれない部分を仕方なくSCRが短絡制御している感じが想像できます。 ここには波形データがあります。



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