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ホンダ力丸HP250の車軸オイル漏れ修理

我が家では「力丸君」と呼ばれて活躍しているホンダの古い運搬車、"HP250"の左車軸オイル漏れが激しくなってきたので修理しました。


さび付いていたフランジを苦労して外すと、泥水用で簡単に外から交換できるタイプのオイルシールが見えてきました。この画像はオイルシールを外して内部のオイルを抜いた所です。オイル量は50ccも入っていません!?。

ここにはの画像が有ります。

よく観察すると軸とオイルシールの間が回転しており、オイルもその部分から漏れているようです。このタイプのオイルシールの場合、軸を保護する意味からインナーの薄いスリーブが入っています。リップはそのスリーブの上を摺動するのが正規の動きです。

しかし我が家の力丸君の場合、せっかく用意されたスリーブの上で滑らずに、スリーブと軸の間で滑ってしまったのでした。この部分には本来のリップは無いため、滑り始めたら比較的容易にオイルが漏れるのでは無いかと思います。

ミッションを割らずに外から交換出来るように設計してあります。設計者に敬意を払いながら純正のオイルシールを注文しようとして軸のガタに気がつきました。

泥水用のオイルシールの場合、軸方向の移動はほとんど許容できないはずです。現物のシールを動かそうとしてもインナーとアウターは軸方向には動きません。と言うことは軸とインナースリーブの間が軸方向にずれていた可能性が高くなりました。

このガタが有る限り、新しいオイルシールを入れたとしても直ぐに軸とインナースリーブ間が滑ってしまいそうな気がしました。このガタは設計の問題なのか経年変化による物なのかは解りませんが、何か対策を考えないといけません。かといってこんなに汚いミッションを割るのは嫌です。。。


もう一つ嫌な部分を見つけてしまいました。

ここにはの画像が有ります。

車軸にハブが圧入されている部分です。軸端にはボルト1本のエンドプレートが付いていました。普通の機械設計者ならこの画像を見て何か違和感を覚えるはずです。そう、軸の方がハブよりも出ているのです。

出ている軸端にエンドプレートが締め付けられています。エンドプレートとハブとの間には0.5mm程度の隙間が有りました。ここから泥水などが染みこんでさび付きを助長したのでは無いでしょうか。それ以前にこのようにガタを残した取り合いにする意味はあるのでしょうか?

ホンダ農機の設計のセンスが私と違っているのか、購買か組立が指定厚さのワッシャを手配せずに薄いヤツを流用したのか・・・?

この部分に関しては直ぐに気持ちが決まりました。内側に今よりも厚いワッシャを挿入し、軸端よりもハブ端の方が少しだけ出る取り合いに改造することにします。これならエンドプレートに依ってハブが軸にしっかりと押しつけて固定されます。隙間から泥水が入る可能性も低くなります。

何か重要な理由が有ったら御免なさい。ホンダの設計の人。


ここには改造前の図面が有ります。

改造前のスケッチです。

0.65mmの隙間と、車軸が左右方向に動くことが気に入りません。

ここには改造後の図面があります。

改造後の検討図です。

ワッシャの厚みを3mmとし、エンドプレートがハブを押しつけるようにしました。また、現状の漏れているオイルシールの内側にTCタイプのオイルシールを挿入し、現状のオイルシールはダストシールとして利用することにします。


新旧のオイルシールです。上の段が付いていたオイルシールで、下段が新たに手配したTC255210です。

ここにはの画像が有ります。


奥の方にTC255210を押し込み、手前側に現状の泥水用を押し込みます。左側は泥水用が摩耗していたのですんなりと入りましたが、右側はまだ生きていたので間の空気が圧縮されてしまい、入れるのに大変苦労しました。あとで思いついたのですが、2個のシールをくっつけて圧入したら良かったです。

ここにはの画像が有ります。


2mm厚のワッシャに替えて、3mm厚のワッシャを入れます。φ22の軸なので、M20用の小型丸の内径を旋盤でφ22.10mm〜22.20mm程度に加工して使いました。

ここにはの画像が有ります。


完成です。一部に加工面がそのまま露出する部分が有ったので、シャーシブラックを塗っておきました。あとはボスを抜くときに裏側のウェルドナットが取れてしまったので、それを溶接しました。

ここにはの画像が有ります。


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