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XS650(XS1B) フルトラの試作

ホール効果センサが何とか使えそうなので、現在セミトラ化しているXS1のポイントを置き換えてフルトラにしてみました。

今回のXS1に関しては、技術的な興味だけではなくて解決したい問題が有りました。いくらセッティングを繰り返しても消えない2,200rpm辺りのギクシャク感の解消です。

タイミングライトで観察すると、この前後の回転数で点火時期が大きく暴れているのが確認できています。ガバナかポイントに問題が有ると思われますので、この部分を非接触構造に置き換えることで解消が期待されます。


ここにはフルトランジスタ式点火装置の回路図があります。

今回の回路図(片側)です。

センサはハネウエルのSS433Aを選定しました。このセンサは1個600円程度で購入できる割りには使用温度が150度までOKです。XS1は空冷のシリンダヘッド横と言う過酷な環境なので、この辺りが最低のスペックになると思います。

FETはいつもの秋月200円商品(笑)を止めてちょっと奮発しました。600V-20AでRdsが0.19Ωです。これで容量成分の大半はダイオードで頭打ちにならず、くすぶりがちでも白い閃光がバチッと飛ぶ予定でした。ところが・・・

FETをコンプリメンタリ型式で駆動するのは初めてだったので、実験的に同じ回路を秋月の2SK3234で試してみました。その時は順調で何も問題は有りません。試験的にドレイン電圧をツェナー経由でゲートに入れて過大電圧を吸収させる方法も確認しました。これも思い通りに動作しました。

調子に乗ってダイオードを外してしまいました。容量成分のピークが350Vくらいまでは出ますが、それ以上は出てきません。磁石をボール盤で回して長時間試しましたが問題有りません。流石に大型のFETは強いです。良く解らんけどアバランシェ降伏がなんたらかんたら・・・のおかげで、たまの過大電圧くらいなら高価なサプレッサダイオードは要らないのでは??と思い始めました。

そこで、耐圧が600VもあるSPW20N60S5様ならもっと大丈夫だろうと予想して、最初からダイオード無しで試してみた訳です。数発キックしますがかかりません。左右を間違えたかと思って入れ替えますがかかりません。

単体では問題なかったのにおかしいです。点火系だけをチェックし始めると右から火が出ていません。センサが悪いのかと思ってセンサ線をグランドに落としてみても火が出ません。

そうこうしているうちに左右とも火が出なくなりました。基板を外して調べてみるとFETが昇天されていました。。。せっかく2個で1,400円も出して買ったのに。

症状としてはD→S間が普段でも中途半端に導通が有ります。しかも左右ともほとんど同じように壊れています。なんか良く解りません。確かに保護ダイオードが無いけれど、キックしただけで600V耐圧の製品が両方とも同じように壊れるんでしょうか?

仕方ないのでこれも秋月で200円だったパナソニックの2SK3192に交換しました。回路はそのままでダイオードの降伏電圧だけ220Vに変更しています。そしたらいとも簡単にエンジンがかかってしまいました。

なんか良く解らんけど、とりあえずこのままで行きます。私は2SK3192が好きです。ゲート耐圧は±30V有ります。実験でも実用でも今までに壊れたことが有りません。

耐圧が低いのでかぶり気味の時に失火する可能性はありますが、これもGX250で冬に1回それかな?と思うことが有っただけです。エンジンが好調でさえ有ればRds=0.05Ωに物を言わせてどのFETよりも点火コイルに蓄えるエネルギーが大きくなります。

現時点の回路は別途超簡単なフルトラとセミトラに記載しました。


ここにはポイント部の画像があります。

ホール効果センサを2個使ったピックアップ部分です。

断熱の意味からは、ベースやセンサブラケット類に非金属を使った方が良いと思います。しかし手元に良い材料が無かったので、ポイント用の鉄板とアルミアングルの切れっ端で作りました。

回転する磁石はM8の長ナットの内径を8mmに拡大して廻り止めの溝を掘り、1辺にφ6x6Lのサマリウム・コバルトの磁石をエポキシで貼り付けます。反対側にはバランス取り用にM6ナットを貼り付けて有ります。

ネオジウム・鉄・ボロンは耐熱性に不安が有ったので、サマリウム・コバルトを使うことにしました。エポキシで固めた廻りは気休めのために流し台用のアルミテープを3重に巻いてあります。アルミ蒸着ではなくて純アルミのタイプなので数千rpmくらいなら遠心力に耐えてくれるでしょう。計算してないけど(笑)。

単体の試験では磁石の頭に鉄片を貼り付けることでドエルアングルを調節できることが解りましたが、常用回転数と消費電流の事を考えると大きなドエルアングルは必要ないと判断し、鉄片を廃止して現状ではカム軸上で65度くらいのドエルアングルになっています。

耐熱電線を覆うガラス繊維のチューブが派手です(^^)。黒が欲しかったのですが赤しか入手できませんでした。私的には格好良く無いのですが、なんか凄い点火装置が付いている様に見えて良いかも。。。と納得しておきます。


ここにはイグナイタの配置画像があります。

イグナイタは試験用として大きめのケースに入れたので点火コイルの上に入りませんでした。仕方ないのでリヤフェンダーの前に付けています。

これに使っているタカチのアルミダイキャストのケースは好きです。値段は薄っぺらいアルミ板のケースと大差ないけれどかなりしっかりしています。こういう用途にはぴったりです。


効果面ですが、2,200の悪魔(笑)は消えました。雨の中試走をしてきましたが大変好調です。1,800rpmくらいでもスムーズに走っています。今までビッグツインのせいと思っていたドコドコ・ギクシャク感の大半は、ポイントとガバナがギクシャクしているだけだったようです。

タイミングライトで確認すると滑らかに進角していきます。気になるのはポイントの時よりも進角が早い気がします。これはポイントのカムを押し上げる仕事が無くなってしまったから良く動くようになってしまったのでしょうか。

ポイントからポイントレスにした場合はスプリングを強化するとか無いのでしょうか?定年退職したくらいのデンソーの技術者くらいなら知っていそうな気がしますが・・・まあ、この辺は今後の楽しみに取っておきます。


宿題としては
実用品としての信頼性を向上させること。
FETが壊れた原因を追っかけること。
最終的にはもう少し高耐圧の製品に交換したいこと。
進角特性で遊んでみること。
マイコンで進角特性をいじれるようにすること。
くらいでしょうか。


ここには放熱穴を開けたカバーの画像があります。

気休めにポイントカバーに放熱穴を追加してみました。部品取りにTX650を持っているのでこういうのが気楽に出来るのが良いです。

内部はホールセンサーだし、センサー自体はエポキシでカバーしてあるので短期的には浸水しても問題は有りません。それよりも普段の放熱で電子部品の信頼性や寿命の向上を期待してみた次第です。


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