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XS650(XS1B) 消費電力の検討

現状の能力を見極めたり将来の能力アップの下地として、XS1の消費電力に関して検証というか積算をしておこうと思います。


スペックから発電能力を確認しておきます。XS1はフィールドコイル制御のACジェネレータが装備されています。これはTXシリーズやXSスペシャルに成っても同じです。能力やフィールドの制御方法が若干変更になっている程度です。

手持ちの資料によるとXS1には日立製の「LD115-01」という発電機が付いていることに成っています。手持ちの資料では出力が解りませんが、型番から想像すると115W定格でしょうか?

もう少し新しい時代の国内向けXS650スペシャルだと、型番が「LD115-2」と改良?されて出力は「154W」と成っていました。-01と-02間のジェネレータとしての明かな違いは中性点の取り出しの有無です。コイル抵抗はたいして変わらないので、変更点はここだけかもしれません。


次に実際の消費電力側からの積算です。電圧は実際の機器印加電圧に近いと思われる13.2Vとしてみました。
5.25Ω(スペック)のフィールドコイルに最大界磁を仮定
消費電流は I=13.2/5.25=2.51A
消費電力は P=13.2x2.51=33.1W

4Ωのイグニッションコイルが2個で1/4位の時間通電と仮定
コイル1個の通電時の電流は I=13.2/4=3.3A
コイル2個の平均消費電力は P=13.2x3.3x2/4=21.8W

ヘッドライト Hi50/Lo40W (ロービームで計算)

テールライト 8x1=8W

スピードメータ照明 3.4x1=3.4W

タコメータ照明 3.4Wx1=3.4W

以上より、ライトを常時点灯すると109.7W(8.31A)が必要と解ります。型番から想像した最大出力が115Wは合っているような気もしますがちょっと苦しい感じです。やはりスペシャルと同じくらいの154Wくらいは有るのでしょうか?

もし昔の様に点灯無しでよければ54.9W(4.16A)で済んでしまいます。この面から考えるとやはり115Wしか無くてもおかしく無いような気がします。


上記はオリジナルの状態ですが、今の私の状態で再検証してみます。
5.25Ω(スペック)のフィールドコイルに最大界磁を仮定
消費電流は I=13.2/5.25=2.51A
消費電力は P=13.2x2.51=33.1W

3Ωのイグニッションコイルが2個で1/5位の時間通電と仮定
コイル1個の通電時の電流は I=13.2/3=4.4A
コイル2個の平均消費電力は P=13.2x4.4x2/5=23.2W

ヘッドライト Hi60/Lo55W (ロービームで計算)

テールライト 8x1=8W

スピードメータ照明 3.4x1=3.4W

タコメータ照明 3.4Wx1=3.4W

以上より、ライトを常時点灯した場合の消費電力は126.1Wにも増加していました。原因は大きく二つあり、フルトラ仕様にしたことから点火コイルをXS400のフルトラ用と交換して居ることと、ライトをH4の55Wに交換している事です。

前者は高回転を使わない事から本来ならポイント用の4Ωコイルでも良いのですが、手持ちの4Ωコイルは長時間通電すると発生電圧が若干低下する傾向が有ったので比較的新しいフルトラ用を使っています。そのためにドエルタイムを1/4から1/5に減らす工夫をしては居ますが消費電力が若干増加してしまっています。

後者は電球自体のワット数が大きいの仕方有りません。かといって今更暗いバルブに後戻りも出来ません。車と同じで入手性も良いことから、これからもH4を使いたい所です。

GX250の時と同じように、昼間点灯をヘッドライトだけにした場合は消費電力が111.3Wまで低減します。


私のXS1はレクチファイヤを低損失のショットキータイプに変更し、レギュレータもFET式に改造しています。そのためもあってか上記の55Wライト一式を常時点灯した126.1Wが必要な状態でも、エンジンが1300-1400rpmも回っていれば発電が追いついています。すなわち1300rpm前後で126Wの有効発電量が有ると言うことを意味します。やっぱり単体では154W有るのかな?

このときフィールドコイルは最大励磁です。これよりも回転数が上がれば上がるほど発電量が増加します。今回は消費電流が回転数の上昇によって増加する要素は無いので、フィールドコイルの励磁は回転数の上昇に伴って弱くなります。

もう一つイグニッションコイルの消費電力。今のフルトラはドエル角制御や定電流制御は行っていません。そのために回転数が上昇するとコイルのインダクタンスによって飽和まで電流が流れにくく成り、結果的にイグニッション系の消費電力は回転数の上昇に伴って低下します。

結局、アイドリングの時は消費電力が最も大きく、それなのに発電量は最低で有るという最も厳しい状態に成るわけです。これは逆に考えるとほんの少しの改良が好循環を呼び、全てが劇的に良い方に行く可能性も示唆しています。


最後に私のXS1の方向性です。

今のところグリップヒーターを付けるとか、電熱ベストを着るとか、消費電力を増やす予定はありません。もし付けるとしても今の状況だと回転数を2000rpmも上げておけば十分まかなえそうな雰囲気です。必要なのは極低回転でも発電と消費の収支が釣り合って居る電気系の獲得です。

アイドリング時に発電量が減れば発電機を回す動力が少なくて済んでエンジンが根本的に楽に成ります。またアイドリング時にもレギュレータの規定電圧までバッテリー端子電圧が上昇していれば、イグニッション系が安定して強力な火花を飛ばすことが出来ます。これは結果的にアイドリングの安定を意味します。

フィールドコイルの励磁電流が減ると言うことは、ただでさえ老いてくたびれたXS1の電装系に少しでも楽をさせて、トラブルの可能性を下げたり寿命の延長をはかる事を意味します。

消費電力改善の一つの方法としてはGX250の様に、法令で必要とされていないヘッドライト以外の灯火類を昼間は点灯させない回路にすることです。これで昼間は14.8W得します。

又はこれらの灯火類にLEDを採用して消費電力を低減させることです。これだと改善範囲が夜間にも及びますので、こちらの方が本質的な改善かもしれません。

もう一つのアプローチとして、停止中のライトオフです。手動でやるのは面倒なので自動化したいところです。ニュートラルスイッチを利用してニュートラル時に消灯するのが効果的ですが、厳密に解釈すると保安基準の第32条に違反して居ます。機嫌の悪い警察官に絡まれるのは好きでは有りません。

と言うことは発電機からエンジン回転中の信号を拾ってきて、エンジン回転中のみライトオンに制御するしか無いのかもしれません。

色々と悩んでみましょう。


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