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普通のねじの話

変なねじの話を見ていただいた方から、あれでは「工学系以外の人には解らんだろ」とご指摘をいただいたので「普通のねじの話」も書いておきます。

「変なねじの話」は自分用の覚えや工学系の一部の人向けに作ったメモでした。しかし、GPS、オートバイ、自転車、等には一般的では無い「変なねじ」が使われていたりします。

こういった機器のユーザーは、機械設計事務所に入社した新卒以上に「変なねじ」に接する機会が多いにもかかわらず、基礎的な情報を得る手段が無かったりします。

向こうを見て用語が解らないと感じた方は、こちらをサラッと読んでみて下さい。


ここにはねじの説明画像があります。

例として「ボルト」先端部分の「おねじ」の画像です。これに組み合わされる穴の内側にギザギザが付いた方を「めねじ」と呼びます。

太さを表すには右端の「d」の寸法を使います。「d」は単に「外径」とか「おねじ」の場合は「おねじの外径」と呼びます。左端の「ds」の寸法はねじの太さを表す時には使いません。「d」が同じであっても、用途や製作方法によって「ds」の寸法は変わってきます。ねじのサイズを工具のサイズで呼ぶ人が居ますがこれは間違いです。

ギザギザの度合いを表すには「P」の寸法を使います。この寸法を「ピッチ」と呼びます。ここまでは日本などの場合です。アメリカなどで使われている"インチねじ"の場合は、ギザギザの度合いを「1インチ中に何山あるか」で表します。こちらは「山数」と呼びます。

「60°」と書かれた部分は「ねじ山の角度」と呼ばれる寸法です。今の工業製品に使われるねじは60°が普通です。アメリカの製品に使われている"インチねじ"も60度です。例外的に建築用に残っている「ウィットねじ」だけが55°です。日本のホームセンターなどで入手しやすい"インチねじ"のほとんどは建築用の55°「ウィットねじ」なので注意が必要です。


ここには各種材質のねじ画像があります。

手元にあった各種の子ねじ類です。左から、アルミニウム、黄銅にクロームメッキ、鉄4.8表記ユニクロメッキ、ステンレス、鉄8表記ユニクロメッキ、チタン、鉄12.9表記黒染め、の順です。(本来は「鉄」じゃなくて「鋼」と表記すべきですが、入門的なこのページでは「鉄」表記にしています。)

細いボルトは弱くて、太いボルトが強いのは当たり前です。そのために比較するときには同じ断面積の材料がどのくらいの引張力に耐えるかで比較します。材料規格の強度もこのような考え方です。

4.8表記と12.9表記のボルトは現行のJIS規格に基づいた表記のボルトです。4.8や12.9の最初の"4"や"12"は材料が引きちぎれるときの力を表します。1mm^2当たり400N(ニュートン)又は1200Nの力を加えたら引きちぎれる材質と言うことです。小数点右側の"8"や"9"は400x0.8=320Nまでなら力を加えても開放すれば元の寸法に戻ると言う意味です。12.9なら1200x0.9=1080Nを意味します。どちらもホームセンターで購入できますが、引張強度が約3倍も違うのは注意が必要です。

アルミとチタンは自転車の小物に付属してきたおまけです。詳細の材質が解りませんが、アルミは2024系と仮定すれば上記の"4"や"12"に相当する部分は"3"位かもしれません。チタンも幅がありますが、強度のあるJIS60種相当と仮定すれば"8"程度の強度は有ります。

一つ上の大きな画像のボルトもチタンです。このボルトは製鉄所の酸洗槽の中で80℃以上の塩酸に曝されます。チタン合金の中でも耐食性を重視したチタンパラジウム系の合金で出来ています。同じチタン製ですが強度は"3"弱くらいしか期待できません。

左から2番目はうちの会社のGPSカメラブラケットに使っているボルトです。電子コンパスに影響を与えないように黄銅を使っています。メッキされた鉄系と見分けが付きません。こちらも強度は"3"弱くらいしか期待できません。

"8"と表記のあるボルトは古いオートバイから外したボルトです。これは"8T"と言う強度分類を意味していて、上記で言うと"8"に相当する強度が有ります。旧JIS規格の表記方法です。古い整備工場などでは、今でも「はちティーのボルト」等と言うオヤジさんが居たりします。

中央はホームセンターで買ってきたステンレス製です。ホームセンター物は詳細材質が解らないことが多いのですが、これはパッケージに"304"と書かれていました。SUS304の事です。"A-50"も同じくらいの材質です。"5"くらいの強度が有ります。

ねじの強度を引張強度だけで評価するのは少し問題が有ります。面接もせずに数学のペーパーテストだけで数学の先生を採用するくらい問題です。

しかし引張強度すら評価せずに「全てのボルトをステンにする」等というのは危険です。「牛肉が一番高級品だから、全ての料理は牛肉で作れ!」と指示する中華料理店のオーナーと同じくらい危険です。


ここには表面処理の話を書こうと思っていますが、なかなか進みません。御免なさい。

ここには文章

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ここには文章

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